魔女のお婆さんがスープカップをジャクリーヌに手渡しながらこう言った。「ジャッキ…
カテゴリー: ショートショート
「書痴の幸福なる死」仁木稔
書痴の幸福なる死 仁木稔 0 ――本に埋もれて…
「体外母性」 吉澤亮馬
目が覚めると、枕元で小魚がぴちぴちと跳ねていた。 私の小指くらいの大きさで半透…
「イマジペディア」間瀬純子
――《〈イングリッシュ・ヴードゥー〉の世界へようこそ。快感がきみを待っている。知…
「夜更けの散策にて」飯野文彦
訳あって家族と離れ、甲府市内、相生町、古びた二階建てアパートの一階、角部屋、六…
「雨の日のラクダ」粕谷知世
「僕は雨男なんです」と彼は言った。 大学の新歓コンパの帰り道、同じ電車に乗った参…
「アーバンサバイバー」庄司卓
くそ、やられた。スマホを盗まれた。正確に言うとすり替えられた。今回のクライアン…
「レプリカ飛行石盗難事件」大野典宏
連作 ミネラル・イメージ レプリカ飛行石盗難事件 大野典宏 「全く正しいと思いま…
「お話し」白川小六
少年はイヌに向かって一生懸命話す。「その星は遠い宇宙にあって、そこの人たちは、…
「孤独の温度」片理誠
目が覚めたら死んでいた。いや、死んでいるのに「目が覚める」というのは、変か。 …
「雨戸」深田亨
高齢者施設に暮らす百歳になるおばあさんは、昨日のことは忘れてしまうが昔のことは…
「卵少女」飯野文彦
愛宕山みはらし台のベンチに腰を下ろして、眼前に広がる甲府盆地を見ていると、飯野…
「三つのお願い」川島怜子
「あー、なにもしたくない。毎日ダラダラしていたい……」 雄介(ゆうすけ)はアパー…
「甲府の記憶」飯野文彦
[橋] 土手を散歩していると、古びた橋があった。寿町の、荒川に合流するわずかに…
「ジルコニアの正義」大野典宏
連作 ミネラル・イメージ ジルコニアの正義 Ver.π 大野典宏 「しかし、現実…
「授かり淵」おだっくい
「皆、集まったようだな」 と言ったのは北町奉行曲淵景漸(まがりぶち かげつぐ)で…
「終わる、終わる」庄司卓
先天性の遺伝子疾患で長年通院している。もっともこれといった不調がある訳でもない…
「甲府三景」飯野文彦
そうですね。死んでしまった親しい人に対して僕らができるのは、ただ彼らを記憶しつ…
「麦酒の恵み・女神の歌」粕谷知世
ウルメシュは粘土板から顔をあげた。 疲れた眼を休めたいが、彼がいるのは殺風景な…
「羽化した記憶」吉澤亮馬
そのゴミ屋敷の前に来ると、僕のお腹はぎゅっと痛んだ。 こじんまりした木造建築で…
「蛍石のパズル」大野典宏
連作 ミネラル・イメージ 蛍石のパズル 大野典宏 ――人が抱える悩みは、いつの時…
「十進数の森」片理誠
記。 クォード・クルー一等税務官より、シュナス署長へ。 正式な報告書は後日、あ…
「選択」澤井繁男
当時、右手の人差し指をまっすぐに伸ばすことがまだできた。しかし人工透析導入後、…
「色とりどり」江坂遊
思った以上に盛り上がった結婚披露宴が終わり、ようやく最後の招待客をタクシーに乗…
「猫山」川島怜子
登山家のあいだで、ひそかに伝えられている、難攻不落の山がある。成功した者は誰も…
「こん、こん、こんこん」飯野文彦
「甲府物語」を読んだという方から、葉書をいただいた。その中にあった一文――。〈途…
「名医」井上史
僕の勤務先の病院には『ドラキュラ先生』と呼ばれる医師がいる。 ドラキュラ先生、…
「思い出を振り返ることなかれ」青木和
抜けるような青空だった。地面に落ちる影の色が濃い。 土手の上に真っ直ぐな道が続…
「忘れ物ベイビーズ」イーライ・K・P・ウィリアム
「忘れ物を受け取りに来ました」 西中野駅の忘れ物取扱所で、カウンターの向こうに立…
「Jの悲劇」市川大賀
Jの悲劇 市川大賀 少し今日は遅刻気味だな。そう思った僕は、日々変わらぬ駅への…