「『FT新聞』&『SF Prologue Wave』コラボレーション企画のご紹介」岡和田晃

「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画のご紹介

 岡和田晃

 すでに「SF Prologue Wave」のTwitterをチェックしている皆様はお気づきでしょうが、ゲームブックの専門出版社であるFT書房(https://ftbooks.xyz/)の日刊メールマガジン「FT新聞」にて、2022年11月より月1回のペースで、「SF Prologue Wave」の掲載記事を装いも新たに配信していただいています。

 「FT新聞」は以下からご登録いただけます(完全無料、広告なし)。毎朝、ゲームブックやファンタジー関連の充実した記事が届きます。杉本=ヨハネ「自営業×作家」、吉里川べお「悪魔よそれをとれ」、テンプラソバ「中世ヨーロッパの生活呪文」、岡和田晃「『ウォーハンマーRPG』を愉しもう!」「カラメイコス放浪記」といった連載が満載です。
 新人の登竜門や新作ゲームブック連載の場ともなっています。
 https://ftbooks.xyz/ftshinbun

 今回は第1回~第3回の配信記事をご紹介いたします。この機会に、「SF Prologue Wave」収録作を新たに読み直していただけましたら幸いです(以下の「はじめに」の文責はすべて岡和田晃です)。
 コラボレーション企画の実現にご尽力をいただいた、FT書房の杉本=ヨハネ代表、「FT新聞」の水波流編集長に、この場を借りてお礼申し上げます。

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.1(FT新聞 No.3571、2022年11月3日)

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●はじめに

 「SF Prologue Wave」(https://prologuewave.club/)は2011年から活動しているネットマガジンで、掲載作品数は小説を中心に1500を超えます。
 ここでのSFは「Speculative Fiction=思弁小説」を意味し、狭義の「Science Fiction=科学小説」のみならず、ファンタジー・ホラー・ミステリ、あるいはジャンル分けが不可能な未知の作品をも包含・綜合する、トランスジャンル的な概念です。
 現在、SF Prologue Wave(SFPW)は第3期で、9人の編集者たちが合議で運営するアソシエーション形式をとっています。私(岡和田)もその一員なのですが、このたび「FT新聞」の水波流編集長の理解を得て、SFPWの掲載作を「FT新聞」読者へ紹介するはこびとなりました(不定期連載)。
 SFPWから商業化した作品も数多くあり、実際、私が編纂した『再着装(リスリーヴ)の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード、2021年)および『いかに終わるか 山野浩一発掘小説集』(小鳥遊書房、2022年)はいずれもSFPW発の企画です。
 このたびご紹介する「ヴァレンハレルの黒い剣」は、なんと著者自身の英訳により、「The Dragon Sword of Valenharel」と題して英語のアンソロジー『Crunchy with Ketchup』(WolfSInger Publications,2021)に収められています。
 この経緯も興味深いものですが、まずは現物をご覧あれ。

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オリジナル小説「ヴァレンハレルの黒い剣」

初出:
「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/8787

伊野隆之(いの・たかゆき):
小説家、「SF Prologue Wave」編集委員。『樹環惑星 ―ダイビング・オパリア―』(応募時タイトルは、「森の言葉 /森への飛翔」)で第11回日本SF新人賞を受賞。同作は徳間文庫より刊行。
その他の作品に、「冷たい雨-A Grave with No Name-」(『短篇ベストコレクション 現代の小説 2011』所収、徳間文庫)、「オネストマスク」(『ポストコロナのSF』、ハヤカワ文庫JA)、
「月影のディスタンス」(「ナイトランド・クォータリー」vol.25所収、アトリエサード)、「カザロフ・ザ・パワード・ケース」(『再着装(リスリーヴ)の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』所収、アトリエサード)、
「サイエンス/フィクションをめぐる座談会」(共著、「SF Prologue Wave」所収)ほか多数。近年は英語圏での発表を精力的に模索している。

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.2(FT新聞 No.3599、2022年12月1日)

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●はじめに

 11月3日に配信「FT新聞」No.3571に掲載された「SF Prologue Wave」の初出作品「ヴァレンハレルの黒い剣」は、おかげさまで好評を得ました。お読みいただいた方からは、「かつての創元推理文庫で翻訳されたファンタジーを読んでいるかのような胸躍る一篇だった」(あーるじぇい@owljeyさん)といった反響をいただきました。

 そこで今回は、著者の伊野隆之さんが、同作をいかに英語圏のマーケットに載せたのか、その顛末や苦労話を記したエッセイをご紹介しましょう。
 興味深いのは、自分の作品を自分で英訳していること。これは翻訳論の文脈では「自己翻訳」というのですが、かく言う私(岡和田)自身、『モンスター!モンスター!』第二版に対応した汎用モンスター集『ケン・セント・アンドレによるツィムララのモンスターラリー(Ken St. Andre’s Monsterary of Zimrala)』(https://www.drivethrurpg.com/product/414074)に、デーモンの「カレドミナクス(Kaledominax)」を寄稿した際には、日本語での草稿を自己翻訳し、さらにケンの的確なチェックを経て修正、掲載に至ったという経緯があります。
 『ツィムララ』には、ライターのたまねぎ須永さんもTaketo Sunaga名義でモンスター「Sea-Jibbles」を寄稿されており、まだの方は要チェック。さっそくケンのソロアドベンチャー「猫神のためのミッション(Mission for a Cat Goddess)も出たばかり。いきなり50ページ、110パラグラフ越えというボリュームです!
 狭義の小説のみならず、RPGにおいても、英語圏を視野に入れた活動が求められる状況となっており、伊野さんの試行錯誤は大いに参考になるでしょう(私はなりました)。
 各種デジタル・ツールが縦横に活用されていますが、それに頼りっきりにならず、英語・日本語の知識と実践を蓄えて推敲し、さらにネイティヴ・チェックをふまえるというのがコツであるようです。

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「『Crunchy with Ketchup』あるいは自己翻訳の話」 
 伊野隆之

初出:
「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/8856

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.3(FT新聞 No.3627、2022年12月29日)

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●はじめに

 2011年創設、これまで1500を超える作品をお届けしてきた「SF Prologue Wave」。第1回と第2回では、第11回日本SF新人賞受賞者・伊野隆之さんの一捻りあるダークファンタジーと、自作を海外の読者に届けるための試行錯誤を綴ったエッセイを紹介しました。
 ――第3回では、めくるめく本格サイエンス・フィクションの世界をお届けします! しかもソロアドベンチャー(ゲームブック)のリプレイ。著者は「FT新聞」でもお馴染み、児童文学・歴史ミステリ作家の齊藤(羽生)飛鳥さんです。
 題材は、ポストヒューマンSF-RPG『エクリプス・フェイズ』(朱鷺田祐介監訳、岡和田晃・待兼音二郎ほか訳、新紀元社、初版2016年、増刷改訂版2022年)。人間の精神がデジタル化されて、肉体が義体(モーフ)と呼ばれて交換可能になった未来を描くRPGです。公式サイト(https://r-r.arclight.co.jp/rpg/eclipsephase/)からはルールサマリーや、単体でプレイ可能な体験版も無料ダウンロードできますので、あわせてご利用ください。
 この『エクリプス・フェイズ』は月刊アナログゲーム専門書籍「Role&Roll」のVol.88(新紀元社、2012年)より、なんと10年にわたってリプレイや世界観解説、多人数用シナリオ掲載といったサポートが継続されてきました。そのなかで、日本オリジナルのソロアドベンチャーも掲載されており、お届けするのはそちらの小説風リプレイです。
 本邦ではまだまだ珍しいポストヒューマンSFゲームブックを、とくとお楽しみいただければと存じます。

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「『監視⇔監視』――『エクリプス・フェイズ』ソロアドベンチャー「流れよわが涙、と監視官は言った」リプレイ小説」
 齊藤(羽生)飛鳥

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初出:
「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/8941

【プロフィール】
齊藤飛鳥/羽生飛鳥
作家。
2010年、児童書『おコン草子』でデビュー。
2017年、『へなちょこ探偵24じ』で第33回うつのみや子ども賞受賞。
2018年、『屍実盛』で第15回ミステリーズ!新人賞受賞。
2021年、『蝶として死す』で第4回細谷正充賞受賞。「小説新潮 10月号」に『悪僧独尊謎解き善行』が掲載。
2022年、『揺籃の都』、『『吾妻鏡』にみる ここがヘンだよ! 鎌倉武士』を刊行。
児童文学作家としては齊藤飛鳥名義を、大人向け推理作家としては羽生飛鳥名義を使う。

■書誌情報

「『エクリプス・フェイズ』1人用“超”入門ミッション「流れよわが涙、と監視官は言った」」「Role&Roll」Vol.193所収
 著:岡和田晃
 監修:朱鷺田祐介、待兼音二郎
 発行:新紀元社
 2020/10/17 – ¥1,600

■おわりに

 実は今回、飛鳥さんがプレイしてくださった「流れよわが涙、と監視官は言った」は、『再着装(リスリーヴ)の記憶 〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード)所収の小説「蝿の娘」(著:岡和田晃・齋藤路恵)のソロアドベンチャー化なのです。「蝿の娘」はもともと、「SF Prologue Wave」に掲載されたシェアードワールド小説……。そんなつながりもある両作なのでした。


Ecllipse Phase は、Posthuman Studios LLC の登録商標です。
本作品はクリエイティブ・コモンズ
『表示 – 非営利 – 継承 3.0 Unported』
ライセンスのもとに作成されています。
ライセンスの詳細については、以下をご覧下さい。
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/3.0/