「『FT新聞』&『SF Prologue Wave』コラボレーション企画のご紹介 その4」岡和田晃

『FT新聞』&『SF Prologue Wave』コラボレーション企画のご紹介 その4

 ゲームブックの専門出版社であるFT書房(https://ftbooks.xyz/)の日刊メールマガジン「FT新聞」(https://ftbooks.xyz/ftshinbun)とSF Prologue Waveのコラボ企画は、双方の読者が互いを知る、またとない機会ともなっているようです。
 今回は第9回~第10回で配信された記事をご紹介いたします。
 初出のリンクを辿り、再読の一助としていただけますようお願いします(以下の「はじめに」の文責はすべて岡和田晃です)。

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.9(「FT新聞」No.3823、2023年7月13日)

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●はじめに

 SFやファンタジーとRPGやゲームブックは双子のようなもの。このコラボシリーズで紹介される作家の方々も、新たな読者からの反響をいただき、モチベーションの向上に繋がっているとのこと。引き続き、よろしくお願いいたします。
 今回ご紹介するのは、渡邊利道さんの作品。小説家としては、スタニスワフ・レムや星新一へのオマージュに満ちた思弁小説「エヌ氏」(第3回創元SF短編賞飛浩隆賞を受賞、「ミステリーズ!」Vol.90、2018年掲載)が代表作になるでしょうか。
 D・H・ウィルソン&J・J・アダムズ編『ロボット・アップライジング AIロボット反乱SF傑作選』ほか創元SF文庫の翻訳作品の巻末解説を大量に手掛け、「紙魚の手帖」誌のSF時評、「SFマガジン」での各種レビューなど、評論家としても定評があります。
 今回ご紹介するのはポストヒューマンSF-RPG『エクリプス・フェイズ』のシェアード・ワールド小説。超能力者(エイシンク)がモチーフになっており、単体でも充分に楽しめますよ。僭越ながら、企画から描写の肉付けに至るまで私が大きく関わったので、共同クレジットになっています。
 ちょうど7月28日頃、本コラボレーション企画の第1回~第2回で取り上げた伊野隆之さんの新刊『ザイオン・イン・ジ・オクトモーフ~イシュタルの虜囚、ネルガルの罠』がアトリエサードから刊行予定(https://athird.cart.fc2.com/ca9/387/p-r-s/)。これも『エクリプス・フェイズ』の設定を用いたシェアード・ワールド小説です。
 イラストを手がける小珠泰之介さんは、1998年「コミックFantasy」誌(偕成社)にてファンタジーコミック大賞佳作入選歴(別名義)のあるイラストレーター。古いゲームブックファンでもあり、そちらの思い入れはご当人のTwitterをご参照ください(https://twitter.com/Kyasunosuke/status/1459872219404718083?s=20)。

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「揚羽蝶が砕けた夜 『エクリプス・フェイズ』シェアード・ワールド小説」
 渡邊利道・岡和田晃 
 画・小珠泰之介

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初出:
「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/2605

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「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.10(「FT新聞」No.3851、2023年8月10日)

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●はじめに

 小説は近代ならではの芸術ですが、とりわけ20世紀以降の小説は、映像メディアの発展に代表される社会の大きな変動を前提に、「小説を小説たらしめる表現のあり方はどのようなものか」を自ら問い直してきました。
 そこで注目されるのが描写の密度です。背景には、物語と小説を区分する考え方があります。物語というものはとどのつまりは、決して多くはない種類のパターンの組み合わせに収斂されるとみなされがちです。
 しかし、同じ物語構造でも、語り(ナラティヴ)と描写(ディスクリプション)のあり方によって、まるで異なる体験をもたらすものへと変貌するのです。
 「説明ではなく、描写をすること」は小説を書くうえでの基本ですが、翻って20世紀に誕生した芸術形式であるゲームブックの場合も同様です。いかに読者を体験へと導くか、そのためにも描写にはこだわる必要があります。
 「FT新聞」No.3823(2023年7月13日配信)掲載「揚羽蝶が砕けた夜」は、『エクリプス・フェイズ』のシェアード・ワールド小説で、あーるじぇい@owljeyさんからは、 「揚羽蝶が砕けた夜」に、「25ページの中編が読めるという贅沢。記憶を失った少年に語られる、とある閉じた世界の物語。ところが…終盤の逆転が面白い」とのご感想をいただきました。
 今回ご紹介する「眠り」は、渡邊利道さんの単著としてのオリジナル小説。夢と現実の二重性、稠密な描写のなかで風景の色彩が移り変わる先には、何が待っているのでしょうか。「FT新聞」での紹介にあたっては、段落構成はそのままに、段落ごとの改行に一行スペースをあけ、読みやすさを向上させています。
 渡邊利道さんは「独身者たちの宴 上田早夕里『華竜の宮』論」で、第7回日本SF評論賞優秀賞を受賞するなど、批評家としても定評がある方です。そのことを念頭に、本作をお愉しみください。

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オリジナル小説「眠り」
 渡邊利道

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初出:
「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/9148