「『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(7)」岡和田晃

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『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(7)

 岡和田晃

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 本リプレイは、中世の異端カタリ派を演じるRPG『モンセギュール1244』(フレデリック・J・イェンセン著、岡和田晃訳、ニューゲームズオーダー)のプレイ光景をまとめ直したものです。連載第6回はこちらに採録されています(https://prologuewave.club/archives/10301)。未読の方は、そちらを先にお読みください。

□アクト3:運命の決戦

岡和田:アクト2まで終わったので、ここで15分間の休憩をとってください。「休憩を取るのが大事」と書いてあるルールブックは最近では珍しくありませんが、この作品はより明快ですね。ストーリーゲームでも、マーダーミステリーのような運用の方に近いかもしれません……とはいっても、オンラインでのプレイとはいえ、もう夜はだいぶ遅いですし、参加者の同意があれば15分きっかりでなくてもOKです。今回は10分の休憩にしましょうか。

一同:賛成~!

健部:(10分後)戻りました。他の皆さんも、すでに戻ってますね。
小宮:続きやりましょう~!
セシル(岡和田):アクト3は……。おお、ここはセシルのプレイヤーが読み上げたほうが良さそうですね。(厳かに)「あらゆる希望がひとつ、またひとつと潰えていく。 1244年1月」
小宮:どんどん状況が厳しくなってきましたね……。
セシル(岡和田):おっしゃるとおりです。続きも読んでいきます。

 絶え間ない投石にさらされ、ピエール・ロジェは山頂部の東端の守備についていた部下を城塞の主要部へ撤退させる。わずか数名の見張りが、ロク・デ・ラ・トゥールの監視塔に留まった。賢明な決断というべきで、というのも東側の城壁は、ほとんど垂直に聳え立つ天然の要害に護られていたからだ。
 けれども、それが致命的な結果を招いた。
 ガスコーニュ人兵士の一団が、わざわざ峻厳なる崖側をよじ登ったのだ。ある1月の冷え切った夜中、星明かりのみを頼りに、彼らは危険な氷の道をたどり、岩壁を登った。数時間の危険な登攀の後に、彼らは頂上部を征服した。驚いた衛兵たちは、警報を鳴らす間もなく、たちまちのうちに殺されてしまった。
 東塔は敵の手に落ちた。

セシル(岡和田):次いで、セシルのプレイヤーは、「完徳者」の背景シートを読み上げるように指示されます。男性信者はペルフェッチ、女性信者はペルフェッチャと言いますが、これはオック語での発音に、できるだけ寄せています。
大貫:オック語ですか!
セシル(岡和田):ええ。ベジエ出身のエスカンド・ジェシさんという、日本のデータベース・ファンタジーを研究している方がいらっしゃるんですが、『モンセギュール1244』を翻訳する際、その方に表記に関するアドバイスをいただいたんです。通常の商業ベースでは、必ずしも正しくないとわかっていても慣例に違わざるをえないことが多々あるんですが、『モンセギュール1244』は本格的なのがウリなので、より正確な方を採ることにしました。
松本:なるほど!
セシル(岡和田):カタリ派の根幹に関わる部分ですから、なおさらですね。

□背景シート:完徳者(ペルフェッチ[男性信者]、またはペルフェッチャ[女性信者])

 すべての信者がカタリ派の厳格な戒律に従うわけではない。ごく少数の、戒律に向き合う覚悟ができた者らが、完徳者(ペルフェッチ[男性信者]、またはペルフェッチャ[女性信者])となる。完徳者は修道士の頭巾と道衣、帯を除いて何も持たない。彼らは清らかなる禁欲生活、祈り、説教、そして共同体の助力となる労働に身を捧げるのだ。
 この背景シートを持つキャラクターは、長きにわたる準備と学習の後に、救慰礼(コンソラメンテ)という儀式を受け、清められることで完徳者となった。儀式を行うことができるのは完徳者だけで、儀式の聖性は完徳者間で受け継がれるものだ。もし、あなたに救慰礼を施した完徳者が誓約を破れば、あなたや、あなたが救慰礼を施した者、全員の聖性が失われてしまうのである。
 救慰礼(コンソラメンテ)で清められるのは一生で一度きりである。そのため、大半の者は死の直前に儀式を行う。そうすれば、ふたたび不純な状態に戻る恐れがないからである。救慰礼(コンソラメンテ)として、あなたはイエス・キリストの生き方と教えに、忠実に従わなければならない。罵倒を吐いたり悪態をついたりするのを避けること。誓いを立てることは、自分の言動が常に一致しているわけではない現状に向き合うことを意味する。殺生を避けねばならない。これは肉食の禁止をも意味する。というのも、あなたの兄弟姉妹のひとりが、動物の姿をとって生まれ変わってくるかもしれないからだ。
 他者の求道を手助けしよう。そうすれば、彼らはきっと、来世において完徳者として転生することができるかもしれない。

セシル(岡和田):ふぅ。それでは、アクト3の読み上げに戻ります。

 次の2ヶ月のうちに、アルビジョワ十字軍の部隊は、山頂の側のエリアを、少しずつ征服していった。強力な攻城兵機が設置され、モンセギュール城塞の本丸への投石が始まった。包囲網のさなかで、死と破壊が広がっていった。彼らはますます、脱出できるという一縷の望みに賭けるようになった。ついに、命がけの逃亡が試みられた。

■ガルニエの怒り

セシル(岡和田):――それから、シーンの設定ですね。シーンカードは「苦痛に泣き叫ぶ声」にします。誰がいてもいいんですが、場面は傷ついた兵士たちが運び込まれてくる場面にしましょうか。まず、彼らに救慰礼を授けようとしているベルトランとセシルは登場。ベルトランが出たら(プレイヤーが同じ大貫さんということから)アミエルは出られないので、代わりにファイユ。戦士ガルニエ、騎士ベルナール、防衛の要のピエール・ロジェと全員出ましょう。
兵士たち(岡和田):「(苦痛に泣き叫びながら)もう駄目だ、せめて救慰礼を授けてくれ」
セシル(岡和田):それを聞いて、悲しげに首を振りながら、「しかし、この人はもう儀式に堪えられそうにありません」
ファイユ(松本):「儀式を受けずに亡くなったら、この人はどうなるんですか?」
セシル(岡和田):「魂が救われず……来世は虫か動物か、そのような存在に生まれ変わってしまうことでしょうね……」
ガルニエ(白幡):「(怒って)話が違うじゃないか。俺たち兵士たちは、お前らの言うとおりに戦ったというのに、最後は虫か動物かというのはどういうことだ? 俺たちは何のために生命を賭けたというんだ? そんなことになるから、オレはさっさと逃げろと言ったんだ」
セシル(岡和田):セシルはガルニエの非難について、あえて反論せず、「――やるだけのことはやってみましょう」と救慰礼を試みますが、やはり兵士は途中で事切れてしまいます。
一同:ああ……。
セシル(岡和田):「しかし、たった一つ、魂が救われる方法があります。(ガルニエに向かって)それは、元気なあなたが、彼の代わりに救慰礼を受けることです」
ガルニエ(白幡):どうしようかな(笑)。
セシル(岡和田):「迷う気持ちはわかります。これはわたくしにとっても大事なことなんです。救慰礼を授けたのに、裏切られてしまったら、授けた側であるわたくしや、他に救慰礼を与えた方々の聖性も失われてしまうからです」
小宮:なるほど……!
ガルニエ(白幡):それを聞いて、ためらうように後退ります。

■ファイユの申し出

セシル(岡和田):「わたくしが中途半端な気持ちで申し上げているわけではないこと、おわかりいただけましたか」、そしてファイユに向かって「あなたを見ると、なんだか昔のわたくしを思い出すわ」
ファイユ(松本):「だったらセシルさま、わたしが救慰礼を受けます」
セシル(岡和田):「いいかしら、セシル。いちど完徳者になってしまえば、もう後戻りはできないのよ。あなたは遊びたい盛りでしょうに」
ファイユ(松本):「でも、そうしたら、ここにいる人たちを救えるんでしょう?」
セシル(岡和田):「わたくしも、この包囲戦のさなか、自分が死の淵にあると信じていなかったとしたら、自分が完徳者になっていなかったろうと、自分でも思うわ」これで、セシルのキャラクターカードの「自分が死の淵にあると信じなかったなら、あなたは果たして救慰礼を受けて完徳者になったろうか?」という質問はクリアしました(笑)。
ガルニエ(白幡):おおう、シリアスな場面かと思ったら、なかなかしたたかですな(笑)。
セシル(岡和田):プレイヤーがしたたかなだけで、キャラクターはいたって真面目です(笑)。
ファイユ(松本):「救慰礼を受けさえすれば、みんな死んでも虫になったりせずに済むんですよね?」
セシル(岡和田):「保証はできないわ。あくまでも生まれ変わるとき、その位階が下がらずに済むという話だから。いきなり上位の存在に転生できるとは限らないのよ。そもそも、わたくしたちは皆、罪深い存在なのだから」
ファイユ(松本):「そうなんですね……わたしも、食べるために鳥を殺したりしていましたし……。今思えば、罪深いことをしました」
セシル(岡和田):「亡くなった方の魂が救われるのは大事なことよ。しかし、ガルニエはそれに向き合わなかった。あなたは、まだ若いんだから、無理してその代わりをすることはないと思う。もちろん、よくよく考えてのことなら、救慰礼を授けるのにやぶさかではないのだけど、すぐには結論を出さないで」
ファイユ(松本):「わかりました。よく考えてみます」

■悪魔の所業

ガルニエ(白幡):ここでシーンを奪取して、ストーリーカードを使います。ガルニエを退場させて、代わりにレーモンを登場させましょう。
セシル(岡和田):シーンの再設定という形になりますね。これは皆さんに異論がなければOKとしましょうか。
一同:大丈夫です~!
レーモン(白幡):では、このカードを!

◯13. 魔女の術
 悪魔の所行
「アブラカタブラ……」
 悪魔は醜き正体を露わにする。牛乳は酸っぱくなり、バターは攪拌されず、麦は不揃いに育つ。双頭のニワトリが生まれる。モンセギュールに呪いがかけられたのか? 何者かが、黒魔術に手を染めたのか? 悪魔の儀式こそが、モンセギュールを救うのか?

一同:うわーっ、ナニコレ!?
レーモン(白幡):「(厳かに)待て! 私はこの砦で、魔術が行われているのを知っている。まさしく悪魔の所業だ」
ピエール・ロジェ(小宮):「(ビビって)い、いったい誰が!?」
レーモン(白幡):「このなかに魔女がいる。そんな者を完徳者にしてしまったら、すべての者が救われなくなるぞ」と警告を発します。
セシル(岡和田):「魔女の術……!? 黒魔術じゃないの」
レーモン(白幡):「わたしの食料庫から食べ物を盗み、魔術を行っていた証がここにあるのだ!」と、黒い鶏か何かを出します。
ピエール・ロジェ(小宮)「おっ、おう……!」
岡和田:プレイヤー発言ですが、これはガルニエが犯人ということになってしまうんでは?(笑)
白幡:私がTRPGやるときは、よく行き当たりばったりでGMしてきましたから(笑)、そこは大目に見てください(笑)。
岡和田:いや、もちろん面白いので何ら問題ないんですが(笑)、魔女といっても、男性でも魔女になりえる、ってことを言いたかったんです。

■奪取に次ぐ奪取!

アルセンド(健部):そこを私もシーンを奪取します。「何か古めかしく邪悪な感触」に合わせますよ(笑)。
岡和田:ルール的には合わせなくてもいいんですが、合っているとより美しいですね(笑)。
アルセンド(健部):シーンとしては、ファイユの代わりにフィリッパが登場してください。で、ストーリーカード、2枚目、オープンしますよ! これだっ!

◯16. シカル・アラマン
 裏切り者
「仕方なかったんだ」
 貯水塔に動物の死骸が投げ込まれ、水が汚染されていたのが発覚する。裏切り者の仕業か? なぜ、そんなことをしたのか? 金のためか? 脅迫されたのか? 裏切り者は、もう包囲されて身動きできない状態を脱したいと望んでのことか? きみは自分の割り当てられたキャラクターから、1 人を裏切り者として選んでもかまわない。

小宮:ええ~っ!
松本:ええ~っ!
白幡:なるほど!
アルセンド(健部):「もう耐えられない」となったアルセンドが告白します。「私がやったのよ。こんなところにいたら、みんな死んでしまうじゃないの。わたしはどうでもいいけど、子どもたちをそんな目に遭わせるわけにはいかないわ。早く降伏しましょう!」つまり、アルセンドが裏切り者の魔女だったんですよっ!
一同:なんだって~!
岡和田:アルセンドは魔女の術を使えるんですか?
アルセンド(健部):イエス! アルセンドが魔女で、裏切り者だったということですね。
ガルニエ(白幡):「さすが娼婦。悪魔に魂を売っていたとはな」我ながら酷い言い種だけど(笑)。
セシル(岡和田):「駄目よ、アルセンド。私たちの肉体は最初から汚れているものだから、あなたが身体を売ったとしても、わたくしたちは受け入れる。でも魂を悪魔に売ってしまえば、来世でも救われなくなってしまうわ!」
アルセンド(健部):「本当に神に仕えている人なんているの!? みんなロクデナシばかりじゃない」
セシル(岡和田):「神を試してはいけないわ! あなたは結局、汚らわしい肉体に執着しているからそんなことが言えるのよ」
アルセンド(健部):「(チラリ)そんな私のカラダに執着しているのは、誰なのかしら……?」
ピエール・ロジェ(小宮):「(内心ギクリとしながら)今は劣勢だけど、この戦いは勝てる戦いだから大丈夫だよ」とアルセンドに言います。
アルセンド(健部):そんな取りなしは真に受けません(笑)。「アミエルにもファイユにも罪はないわ。それに、新しく生まれた子どももいるでしょ!」と振ります。
フィリッパ(松本):「ええ、私の子どものことね……」
一同:結局、フィリッパのお腹のなかにいた子の父親は、誰なんだろう……!?

(続く)