「『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(6)」

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『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(6)

 岡和田晃

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 本リプレイは、中世の異端カタリ派を演じるRPG『モンセギュール1244』(フレデリック・J・イェンセン著、岡和田晃訳、ニューゲームズオーダー)のプレイ光景をまとめ直したものです。連載第6回はこちらに採録されています(https://prologuewave.club/archives/10271)。未読の方は、そちらを先にお読みください。

■人を殺したことはあるか?

ファイユ(松本):次の手番プレイヤーは私ですか。冬ですよね。シーンカードは「鳥の鳴き声」にしますね。ファイユはアミエルがピエール・ロジェに憧れているので、「弟が稽古をつけてもらいたがっているんだけど」とお願いしようと思います。

岡和田:すると、シーンに登場するのは、ファイユとアミエルの姉弟と、ピエール・ロジェの3人だけ、ということでOKですか?

松本:いや、きっとおばさんのアルセンドが止めに入るはず(笑)。

アルセンド(健部):なにーっ(笑)。

ピエール・ロジェ(小宮):これは修羅場ですね(笑)。

ファイユ(松本):それでは朝、弟を起こしてアミエルをピエール・ロジェのもとへ連れて行こうとしますよ。

アミエル(大貫):「うん、わかった、行くよ!」と無邪気に喜びます。

ファイユ(松本):おばさんに見つからないように、そっと行動します。ピエールが起きているかはわからないけど、兵舎になっている場所に向かうとしますね。「ピエールおじさん、ちょっと、出てきて」と扉を叩きます。

ピエール・ロジェ:内心、「確かこいつら、アルセンドが面倒見てるガキどもじゃなかったっけ」と思いながらも、「お、おう」と。

ファイユ(松本):「ピエールおじさんって、アルセンドおばさんと仲いいわよね。弟が戦えるようになりたいって言っているから、剣の稽古をつけてくれないかしら」

ピエール・ロジェ(小宮):「子どもが戦いたいって言っているくらい、戦局が思わしくないってことだよなあ」と考えています。

ファイユ(松本)&アミエル(大貫):無邪気な目で見つめています(笑)。

ピエール・ロジェ(小宮):圧に弱いピエールおじさんは……。「小僧、剣を使ったことはあるのかい」と。

アミエル(大貫):「自分で木の棒を見繕って、壁をガシガシ叩いたりはしているよ(笑)」

一同:(爆笑)

ピエール・ロジェ(小宮):じゃあピエールおじさんはへそ曲がりだから、嫌なことも聞くよ。「ふうむ。じゃあ、人を殺したことはあるか?」

アミエル(大貫):「あるわけないじゃない~(涙)」

ピエール・ロジェ(小宮):「じゃあ、素人と何も変わらないな。素振りから見てやってもいいぞ。ファイユ、おまえもどうだ?」

ファイユ(松本):「人を殺したことはないし、わたしは戦いになったら後ろで石でも投げておくつもりだから……鶏はよくつぶすし、よく上手だって言われるけど」

ピエール・ロジェ(小宮):「なんだ、見込みあるじゃないか」

一同:(爆笑)

■狂乱のガルニエ

ガルニエ(白幡):そこで手持ちのシーンカードを使って、シーンを奪取しますよ。ピレネー山脈の朝もやのなかから、傭兵ガルニエがにゅっと姿を現します。「ガキども、戦いは遊びじゃねぇ。命の張り合いなんだよ。アミエル、その木の武器ってのを見せてみな」。自分が割って入るだけなので、そのまま他のキャラクターの方は参加し続けてもらってかまいません。

小宮:アミエルのキャラクターカードにある「あなたが木で作ったのは、いかなる種類の武器か?」の質問を振ってくれてるんですね。

アミエル(大貫):「これは、ぼくがピエールおじさんの腰にさしている剣を真似て作ったんだ。立派でしょ?」と差し出してみますよ。

ピエール・ロジェ(小宮):プレイヤーが言うことじゃないかもしれないけど、ピエール自身、「どうしてこんなに俺のことが好きなんだろう」って思ってますよ(笑)。ピエールってわりとクズだと思うんですけど、なんで慕われるわけ?

一同:(笑)

ガルニエ(白幡):差し出された木の剣を無言で膝でへし折ると、「ガキは家にかえってネンネしてな」とつばを吐きます。

アミエル(大貫):大泣きしますよ。今回のセッションでもう3回も泣いてます(笑)。

ファイユ(松本):さすがにそこは割って入りますよ。「何するの、このおじさん。酷いわね!」

ガルニエ(白幡):「いいか、オレたちはもう後がねえんだ。ジタバタしても死んじまうんだぞ!」と、ヤケクソ気味に笑います。

ピエール・ロジェ(小宮):「そんなおまえは、早朝から、なんで兵舎の側にいるんだよ。コソコソと怪しい動きをしてたら承知しないぞ」と詰め寄ります。

ファイユ(松本):「そうよ、みんなあんたのことを裏切り者だと言ってるんだから!」子どもはけっこう大人の話を聴いてますからね。

ガルニエ(白幡):「オレは自分の心の赴くままに生きているのさ。それが神に従うってことだ」

一同:だいぶ歪んでいるな~。

■アルセンド号泣

アルセンド(健部):そこでようやくアルセンドが現れて「ファイユ、アミエル、こんなところで何をしているの」と。

アミエル(大貫):「ボクね、ピエールおじちゃんに剣を教わることになったんだ。でもね、ガルニエおじちゃんがボクの大事な木の剣を折っちゃって……」

アルセンド(健部):アルセンドには「ピエールおじちゃんに」というところまでしか聞こえていません(笑)。憎しみのこもった目でピエール・ロジェを睨みますよ。

ピエール・ロジェ(小宮):ビンタしようとしたアルセンドの手を止めます。

アルセンド(健部):「子どもたちを巻き込まないでって言ったわよね!」

ピエール・ロジェ(小宮):「(小声で)そんなこと言ったっけか……」

ファイユ(松本):そこはファイユが止めよう。「ごめんなさい、わたしが頼んだの。でもね、ガルニエが邪魔して……」

アルセンド(健部):そこで感極まって叫びます。「誰も私の言うことなんて聞かないのね、もういいわ!」と、泣きながら森へ消えます。

ピエール・ロジェ(小宮):ここは追いかけるべきなのかなあ。

岡和田:シーン・プレイヤーの松本さんと相談して決めてください。

アルセンド(健部):もう見えないくらい遠くに行っちゃってるから(笑)。

ピエール・ロジェ(小宮):健部さん、優しい。ここは追いかけないでおきます。

ファイユ(松本):それでは呆然と立ち尽くすファイユとアミエルで、場面がフェードアウトしていく感じですね。

■ベルトランの直観

岡和田:次の手番プレイヤーは大貫さんですね。アクト2はこれで終わりですが、ストーリーカードの使用枠はまだ1枠余っているので、誰かがストーリーカードを使ってしまったほうがいいですね。

大貫:これは私以外の人が使ってもいいんですか?

岡和田:ストーリーカードはシーンを設定したプレイヤーしか使えませんが、ナレーションを奪取しちゃえば、別のプレイヤーが使ってもかまいせんね。

小宮:タイミングはシーン開始時のみですか?

岡和田:シーン開始時に出すこともできますが、場合によってはすでにプレイされている場面に差し挟む形で出してもかまいません。ただ、ストーリーカードを引けるのはアクト3までで、使用できるのはアクト4までということには改めて注意が必要ですね。

大貫:それではシーンを設定しようかと思うんですが……。「犬の吼え声」のシーンカードを選択します。

健部:その前に、気になっていることがあるんですけど。フィリッパのキャラクターカードに書かれた情報によれば、彼女のお腹のなかには子どもがいるんですが、妊娠期間って9ヶ月くらいですから、そろそろ生まれないとおかしい。

岡和田:いや、そこは京極夏彦の『姑獲鳥の夏』みたいに、20ヶ月くらい妊娠していても、ゲーム的にはOKなんですよ。

小宮:『姑獲鳥の夏』みたいな例じゃなくても、神の子だからずっとお腹のなかにいる、なんてのもありかもしれませんね(笑)。

岡和田:ただ、前に私がプレイしたときには、アクト2でフィリッパは普通に出産してましたね。ですので、生まれるかどうかも皆さん次第です。

健部:生まれるとなると、さすがにフィリッパ的には誰の子か決めておかないといけないでしょう。

ベルトラン(大貫):確かに……(考える)。他にやり残したことはないかな? 思いつきました。だんだん貯蔵庫の食糧も尽きてきているということで、ベルトランとしては、信徒たちの生活を守らなければいけないわけですから、領主のレーモンに貯蔵庫を見せてもらうよう掛け合いたいと思います。「食糧をちゃんと管理していないんじゃないか?」との疑いがありまして、レーモンを問い詰めたいなと。

レーモン(白幡):それに対してレーモンは拒否します。「せっかくのお申し出だが、お断りをさせていただく」

ベルトラン(大貫):「なぜだ。ちゃんと管理しているのであれば、鍵をあけて見せてくれてもいいじゃないか」

レーモン(白幡):「貯蔵庫の食糧は防衛戦に必要なものであって、戦を担う騎士の管轄だからな。あなたたち完徳者が管轄するのは肉体のことではなく、魂の救済であるから、見せる必要はない」

ベルトラン(大貫):「弱々しく吼えている声が最近、ずっと聞こえてくる。犬でさえ飢えておるのだぞ」

レーモン(白幡):「なあに、犬どもが飢えて凶暴になると、見張りとしていっそう役に立つ。その方が都合がよいのだ」と強弁します。

ベルトラン(大貫):それはさすがに言い返せず、すごすごとその場を後にしますよ。

■コルバの告発

コルバ(岡和田):そこをコルバが追いかけて、そっとベルトランに食料貯蔵庫の鍵を渡します。「夫はああ言ってますが、単に食糧をちょろまかしているのを、あなたにバレたくなんですよ」

一同:な、なんだって~っ!

コルバ(岡和田):「あたくしは以前、子どもを亡くしたことがあるの。清らかな子どもだったのに、レーモンはこれ以上女の子はいらないって、ろくに食事を回さず、栄養が足りなくて死んでしまった。あなたのような清らかな完徳者の方に、同じ道をたどってほしくないんです。あのひとは最悪で、まったく汚らわしいけだもののような男なんです」

ベルトラン(大貫):「すると、そなたはレーモンとの結婚を後悔していると?」

コルバ(岡和田):「ええ。あたくしのこれまでの人生で、いちばん後悔していることはレーモンと一緒になったことなんです」

小宮:ここでコルバのキャラクターカードの質問を拾うんですね(笑)。

コルバ(岡和田):「だって、あたくしは見てしまったんですもの。あの人が夜な夜な、フィリッパの寝室に入っていくのを」

一同:うわーっ! お腹の子って、もしかして……。

ベルトラン(大貫):「――それはさすがに、許されることではないな。レーモンは人の道を外れようとしている……。食糧の件も信用ならないので、私利私欲のために使われていないか、貯蔵庫のなかを確認させてもらおう」それで、コルバにもらった鍵で貯蔵庫の扉を開けると、案の定、なかの食糧は報告されていたよりも、明らかに少なくなっています。

一同:やっぱり!

ベルトラン(大貫):「やはり、これはおかしい。これでは長く持ちこたえられまいぞ」これを真っ先に、ピエール・ロジェに伝えに行こうと思います。

ピエール・ロジェ(小宮):それではシーンを奪取して、ここはストーリーカードから「カタリ派の秘宝」のカードを使います。

◯1:カタリ派の秘宝
 信徒たちが地下に隠した埋蔵金
「金、銀、莫大な量の貨幣がある」
 モンセギュールには、何十年もの間、つつましやかな生活を送る人々によって、予想以上の財宝が貯め込まれている。圧倒的というほどではないものの、軍隊を買収するには充分だ。これが十字軍の手に落ちたら? 傭兵を雇うために用いたら? あるいはロンバルディアのカタリ派信者たちによって持ち去られたとしたら、どうなるか?

一同:これは!(息を呑む)

健部:ピエール・ロジェは財宝のありかを押さえている、ってこと?

ピエール・ロジェ(小宮):そうなんです。「実は、隠された財宝の話を聞いたことがあって……」

ベルトラン(大貫):さすがにびっくり仰天しますが、「もし、正しい信仰のもとであれば、その秘宝を活かせるかもしれない。十字軍との交渉にも使えそうだな」と。

ピエール・ロジェ(小宮):「食糧は不足しているかもしれないが、お金は押さえているので、ここはなんとかしてみせよう」ここでシーンを切ります。

岡和田:アクト2の終わりにふさわしい、緊迫感のある展開になりましたね。

(続く)