「深田亨の3or4 三つのクリスマスと四つのバースディ」深田亨

<3つのクリスマス>
 【クリスマス・ライブラリー】
 クリスマスの季節にだけ開く図書館は、どこにあるのかだれも知らない。
 イブの夜、去年の同じ日に借りた本を枕もとに置いておくと、寝ているあいだにサンタクロースが新しい本と交換してくれる。
 すごく分厚くて、読むのに一年かかるんだ。
 今年はどんな本が借りられるのかなあ。

 【クリスマス・プレゼント】
 夜が明けるころ、仕事を終えたサンタクロースはやっと自分の家に帰ってくる。
 暖炉が燃えて部屋は暖かい。
 ベッドの横の机にはリボンのかかったかわいい小箱。
〝お疲れさま〟のカードを添えて。

 【クリスマスの恋人たち】
 少女はおさななじみの少年に同情して一緒に家出をした。
 イブの夜にふさわしく雪が降りだしたが、二人に行くあてはなかった。
 にぎやかな街のはずれ、ひっそりとした路地にきらきらしたツリーが飾られた〝HOTEL〟のネオン。
 チラシを配っていたサンタクロースが二人を見て、人差し指を立てて左右に振り、通りのむこうの終夜営業のマクドナルドを指差すと、セットが無料になるクーポンを二枚くれた。

<4つのバースディ>
 【バースデーケーキ】
 ♪ハッピーバースデートゥーユー。
 百歳の誕生日おめでとう。
 さあ、ロウソクを吹き消して。
 一度にじゃなくて、怖い話をしてから一本ずつだよ。

 【バースデープレゼント】
 ♪ハッピーバースデートゥーユー。
 お前もこれで一人前の大人だな。
 包みを開けて見ろよ。
 拳銃と一緒に、殺しちまう相手の住所も入っているだろ。

 【バースデールーム】
 ♪ハッピーバースデートゥーユー。
 もう三十歳になったのか。
 ここにきてから十年経ったわけだ。
 鎖を外してもらいたければ、そろそろ口を割ったらどうなんだ。

 【バースデーディナー】
 ♪ハッピーバースデートゥーユー。
 料理に毒が入っていないか、気にしてるのね。
 ご心配なく、今日はお祝いだから。
 毎日の食事に少しずつ入れているのは、お休みにしたわ。