《1行(句点一つ)または2行(句点二つ)に圧縮したショートショート作品》
『脱皮岬』
飛び込むと一皮むけるって評判だ。
『蝶類図鑑』
密に群がるという説明で、盗聴でつかまったときの写真だと思うが、うちの町長の大きな両耳が掲載されている。
『ゆめ通』
広告代理店の「ゆめ通」が「夢に御社の製品広告をつけませんか」と営業しにやって来た。
「スポンサー付きの夢なんて見たことがない」と断ったら、「NHKしかみておられないんですね」と帰っていった。
『東京迷宮展』
世界に実際にある迷宮や迷路をまねて東京に建築し展示したというのが好評の原因。
しかし当初の予想通りだが、入場者数と出場者数に、一致は見られなかった。
『忘れたいのよ』
ワスレナグサとレタスを掛け合わせてできたワスレタスは、代議士の悩みを忘れるのにもってこいの食材だ。
『ボトルショップ』
実はこの魔法のボトルを使えば、ボトルの中に舟を入れたボトルシップが簡単にできる。
でも僕は、舟ではなく、気に入ったショップを店員さんごとびんの中にキープしておくことにした。
『栽培工法』
マンションの部屋が光合成による細胞分裂で増えていき、もうすぐ宇宙ステーションまで届きそうになっている。
『記憶消しゴム』
頭に当ててゴシゴシやると、どんどんイヤなことを忘れて行く
でも何故だか目の前に落ちたカスをゴミ箱に捨てられないでいるあなた。
『味わい深い出汁の本』
読み終わったら、1ページ破ってお椀の中に入れて、お湯を注ぐ。
「本だしの本」としてよく売れている。
『後売り券』
「前売り券は知っているけれど、後売り券っていうのは知らないなぁ」
「この後売り券をお買いいただくと、感動ライブの余韻がたっぷり楽しめます」
『宇宙からのメッセージ』
ハートマークは友好の印だと誰でも思うじゃないか、それがエイリアンの足型がハート型で「踏みにじってやる」というメッセージだったとは、思いも寄らなかった。
『解放の呪文』
「じゃ、人間を束縛しているものを見事に全部取っ払う『解放の呪文』をかけてあげよう」
「あら、その魔法って服をアッと言う間に脱がしちゃうんじゃなかったっけ、私よくかけられるのよね」
『用意ドン』
次の種目は人格借り物競争だから、地球人のイタコを連れてくれば勝てるさ。
憑依ドン。
『自動ドアが反応しない』
「私、体重が軽いからかしら、コンビニなんかの自動ドアの前に立っても全然反応してくれないのよ」
「あぁら、丁度いいじゃない。天国の扉も自動化が進んでいるって聞くから」
『悪魔の朝食』
断じてベーコンエッグじゃない。
こんがり焼いた霊魂エッグが最高。
『意識の結晶』
意識を結晶化して取り出す実験に成功したんだが、実験で僕の中の「嫉妬心」を結晶にした後は、まったく研究や実用化に身が入らなくなってしまった。
『人刺し指』
そうか、漢字の間違いじゃないのか、マジで人差し指で刺し殺したっていうのだな。
『このキスは不可抗力』
きみの口元のホクロと、その同じ位置にある僕の口元のホクロに、強力な引っ張り合う磁力が働いたみたいで、ごめんなさい。
『レンタルフェイスショップ』
大人気で、いつ行っても、貸し出し中。
並んでいるのは、のっぺら坊ばかり。
『3or4の次の次』
「3or4」の次が「1or2」だが、いったいその次の「―1or0」はどうやるつもりなんだい。