ゲームブックの専門出版社であるFT書房(https://ftbooks.xyz/)は、新作『ローグライクハーフ』がゲームショップのベストセラー・リストの常連になっており、また『モンスター!モンスター!TRPG』の第1弾『猫の女神の冒険』が発刊されたばかりです。
そんなFT書房の日刊メールマガジン「FT新聞」(https://ftbooks.xyz/ftshinbun)とSF Prologue Waveのコラボ企画、今回は第13回~第14回で配信された記事をご紹介いたします。
初出のリンクを辿り、再読の一助としていただけますようお願いします(以下の「はじめに」の文責はすべて岡和田晃です)。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.13?(「FT新聞」No.3935、2023年11月2日)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに
ネットマガジン「SF Prologue Wave」より、「FT新聞」の読者へ向けて、粒よりの佳品をご紹介していく本企画。
プロ作家の小説が無料で読めてしまう、たいへんお得な企画です。
今回は粕谷知世さんにご登場いただきました。
粕谷さんは魔術的リアリズムの技法を自家薬籠中の物とする書き手で、「文字」を切り口にラテンアメリカの歴史と神話を重層的な筆致で綴った第13回日本ファンタジーノベル大賞を受けた『クロニカ 太陽と死者の記録』( 新潮社、2001年)でデビュー。
続く『アマゾニア』(中央公論新社、2004年)は16世紀の女人族の長・赤弓の冒険を扱い、フェミニズム・ファンタジーとしても高い評価を受けました。
とりわけ「FT新聞」の読者に勧めたいのは、近作『小さな者たち』(早川書房、2020年)や、世界観を同じくする「「君が見しもの」(「ナイトランド・クォータリー」Vol.32、アトリエサード)あたりでしょうか。
信仰と供犠のあり方が重要なテーマとなっており、あなたのファンタジー観を根底からアップデートさせてくれること請け合いです。
私は『クロニカ』をリアルタイムで読みましたが、粕谷さんとお目にかかったのは『終わり続ける世界のなかで』(新潮社、2011年)関連イベントを見に行ったのが初でした。
その後、今年の日本SF大会で開催した海外TRPGパネルにお越しくださり(!)「なんだか面白そう」と、つい先日T&Tラヴクラフト・ヴァリアントを私のGMでプレイしたばかりなのです(しかもシナリオは伏見健二さんの未発表新作!)。
「物語を書く、読む、両方の楽しさが味わえるゲーム、面白かったです」とのご感想をいただきました。
その粕谷さんが、「FT新聞」読者に、まずは紹介したいというのがこの作品。いつの間にか入り込んでしまう「森」を、あなたも幻視することでしょう……。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
オリジナル小説「星明かりの森」
粕谷知世
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/10092
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
「FT新聞」&「SF Prologue Wave」コラボレーション企画 Vol.14(「FT新聞」No.3963、2023年11月30日)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
●はじめに
「FT新聞」には読者参加枠があり、読者がいつでも書き手にクラスチェンジすることのできる仕組みが整えられています。
そうしたなか、文章・構成ともに一級品の書き手の作品に、普段から触れていくのは大事だと考えます。
ネットマガジン「SF Prologue Wave」は、基本的に書き手はプロで、かつ編集部内での査読システムがあり、一定の品質に達したうえでの公開という手順を経ております。
その意味で、コラボ企画でお届けしている作品は、愉しんで読めるだけではなく、読者の皆さまのご参考にもなると思います。
いまのところ、1作家につき2回のローテーション、月1回ペースでお届けしているのですが、粕谷知世さんの第2回は、こちら「パパの思い出」になります。
「ジャガイモ問題」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
中世ヨーロッパには存在しないはずのジャガイモが、なぜかファンタジー世界に登場する状況を皮肉った(?)ものです。
結論からすれば、ファンタジーは現実の似絵ではあっても現実そのものではないわけですから、必要な因果律に見合いさえすれば、別に実際の中世にないものがあってもおかしくない。
現に『トンネルズ&トロールズ』の『コッロールの恐怖』(グループSNE/書苑新社、2020年)では、トークティパスという異星的な蛸頭の種族のメムラスというNPCが、呪文を仕込んだジャガイモを所持しています。
一方、「わたしはジャガイモに関してはジャガイモ警察になりそうです(笑)」とおっしゃるのが粕谷さん。
実際、ジャガイモを語り手に据えた「パパの思い出」を一読すれば、あなたもジャガイモに一家言できること請け合いです……!
粕谷知世さんは、少女の成長を幻想を交えながら描いた『ひなのころ』(中央公論新社、2006年)や、ノストラダムスの大予言のような終末論に対する恐れによって投げかけられた陰を扱う『終わり続ける世界のなかで』(新潮社、2011年)等、
現実世界を舞台にした小説にも佳品がたくさんあります。
「SF Prologue Wave」にもコンスタントに新作が出ますし、日本ファンタジーノベル大賞同窓有志18名によるアンソロジー『万象3』(惑星と口笛ブックス近刊/電子書籍)にも書き下ろし「いき・かえり」が収められるとか。要チェックです!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
オリジナル小説「パパの思い出」
粕谷知世
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「SF Prologue Wave」
https://prologuewave.club/archives/8467
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●