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『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(4)
岡和田晃
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本リプレイは、中世の異端カタリ派を演じるRPG『モンセギュール1244』(フレデリック・J・イェンセン著、岡和田晃訳、ニューゲームズオーダー)のプレイ光景をまとめ直したものです。連載第3回は、SF Prologue Waveに採録されています(https://prologuewave.club/archives/10222)。未読の方は、そちらを先にお読みください。
■ある夫婦の悩み
岡和田:シーンを終えたらストーリーカードをもらえます。これは、アクト2から使えるもので、NPCやアイテムを登場させ、比較的大掛かりな事件を起こすことができるんです。ただし、アクトごとの使用枚数に上限があります。
松本:このストーリーカードは自分しか見られないんですか?
岡和田:特に規定はないので、公開してもかまわないのですが、意外性を出したいならば、自分だけ見ておいてもいいかも、ですね。
松本:じゃあ、ひとまず自分だけ見ておきます(笑)。
大貫:次のシーンプレイヤーは私ですね。登場させられるのは、主要キャラクターだけなんですか?
岡和田:特にそういう縛りはありません。なので、展開によっては、支援キャラクターの方が目立つ展開になることも珍しくないのです(笑)。
大貫:なるほど。どうしようかな。まず、シーンカードは「夜闇を駆ける馬の足音」を選びます。それで、アミエルが泣いていたときから、さほど時間は経っていない段階にします。完徳者のベルトランは登場させたいな。まだそんなに、戦局は切羽詰まっていないということで――フィリッパから夫ピエール・ロジェに関する、色々と相談を受けていることにしましょう。
フィリッパ(大貫):「最近、どうも夫へのすごく不満が溜まっていて、えもいわれぬ感情に囚われることがあるんです。ベルトランさま、これって私の信仰心が足りないということでしょうか?」
一同:おお、さっそく支援キャラクターをジャックしてる~(笑)。
ベルトラン(大貫):それを聞いて、私(ベルトラン)はピエール・ロジェのところへ行き、ここはひとつ、男同士、腹を割って話してみようと思うわけです。
ピエール・ロジェ(小宮):なるほど~。ではピエール・ロジェも登場しますね。
ベルトラン(大貫):そこになぜか、アルセンドも居合わせることにしましょう。
ピエール・ロジェ(小宮):これは……修羅場の予感(笑)。ピエール・ロジェはフィリッパという妻がありながら、ときどきアルセンドの身体を金で買ってもいるわけですからね。
アルセンド(健部):そんなアルセンドは、物陰からじっと見ていますよ(笑)。立場上、直接話しづらいんだけど、ぜんぶ聞いているわけです(笑)。
一同:(爆笑)
ベルトラン(大貫):「ピエール、お前は最近、フィリッパとの間はどうなってるんだ? 夫婦で誓い合った仲ではないか。いくら現世がくだらぬとはいえ、不必要なもめごとは誰も喜ばぬぞ」
ピエール・ロジェ(小宮):「確かに夫婦の誓いを交わした仲ではありますが、正直に言って、フィリッパの奴のお腹の子どもが本当に私の子どもなのか、心配になっているですよ(笑)」。さっそく、フィリッパのキャラクターカードにある質問事項の設定を使わせてもらいます(笑)。
フィリッパ(松本):カタリ派的には、子どもは生まれてこない方がよいから、逆に子どもにそこまで関心を持たないんじゃないんですかね?
岡和田:そう解釈してもかまいませんが、ゲームをスムーズに進めるためには、ある程度割り切ってもかまわないと思います。つまり、カタリ派の厳しい戒律を守らなければならないのは、出家して完徳者になった人だけで、亡くなる直前に救慰礼(コンソラメンテ)を受ければ、それまでの罪は許されるから、在家信者は、そこまで悲観的ではないと見てよいと思います」
フィリッパ(松本):なるほど、確かにその方が進めやすいですね。
■アルセンド乱入
アルセンド(健部):では、アルセンドが脇から出てきて「ピエール、さっきから聞かせてもらったけど、あなたにそんな人の貞節を疑うような資格があって?」
一同:おお~。
ベルトラン(大貫):「どういうことだ?」
ピエール・ロジェ(小宮):「そうだ、俺にも聞かせてくれ、アルセンド!」
アルセンド(健部):それには答えず、思わせぶりにニヤリと笑います。
ピエール・ロジェ(小宮):(アルセンドのキャラクターカードを見て)この3つめの質問も、ちょっと怖いですよね。「ピエール・ロジェと寝るとき、あなたは何を感じるか?」って(笑)。
アルセンド(健部):さっきのシーンで、アミエルがアルセンドに引っ叩かれたわけですから、きっと色々あったんだと思いますよ(笑)。
ピエール・ロジェ(小宮):アルセンドはピエール・ロジェとの間に愛があるんだと思ったら、ベルナールともつながってるじゃんって思って、軽く絶望します(笑)。
アルセンド(健部):「そこはプロの「お仕事」なんだから、相手はより好みしないわけよ」
アルセンド(岡和田):「ベルナールなんて、単なる金ヅルでしかないわけよ(笑)」
一同:畳み掛けるなあ(爆笑)。
ピエール・ロジェ(小宮):「じゃあ、ちょっとは俺のこと好きでいてくれるんじゃないか」と、淡い期待をかけます(笑)。
アルセンド(健部):「あなた、夜になると本性が露わになるからね……」
一同:(爆笑)
ピエール・ロジェ(小宮):その本性の部分が、フィリッパに嫌われる原因なんじゃないかと考え始めます。
アルセンド(健部):「あなたの心のなかには戦争しかないでしょう。女の人を愛したことなんてないんだわ」
ピエール・ロジェ(小宮):ここは開き直ります。「ったりめーじゃねえか、俺は戦争も女も、勝てればそれでいいんだよ!」
アルセンド(大貫):ここで、アルセンドは「夜闇を駆ける馬の足音」を聞きます。ちゃんと、シーンカードの設定を回収しないと。でも、何が起こるのかは考えてません(笑)。
レーモン(白幡):(前に取得したシーンカードを出して)ここでいったんシーンを奪取します。のっそりとレーモンが入ってきますよ。「ピエール・ロジェよ、探したぞ。そんなところで無駄話をしていないで、防衛計画について早急したいことがあるから、主塔に戻り私の部屋に来るように」と言って立ち去ります。
ピエール・ロジェ(小宮):「そうだ、今は戦争なんだから、女のことなんか考えても仕方ないよな」
アルセンド(健部):「あなたがそんなんだから、フィリッパは……」
■母娘の対立
岡和田:次は私が手番プレイヤーですね。シーンカードは「乾いた汗のすえた臭い」にします。カードを補充して、っと。時系列的には、さっきの場面の直後にします。登場するのは、レーモンと、ピエール・ロジェ。あとはレーモンの妻のコルバと、エスクラルモンドにしましょう。エスクラルモンドはガルニエの誘いを断った後、ということで。フィリッパの妹ですから、ここにいてもおかしくないですね。
それでレーモンとピエール・ロジェが防衛戦について話し合っているのですが、一日働いた男たちの乾いた汗のすえた臭いがしてきます。
ピエール・ロジェ(小宮):なるほど~。
コルバ(岡和田):「お茶をどうぞ」
白幡:(ボソッと)お茶、この時代にあるのかなあ……。
コルバ(岡和田):(ギクリ)あ、いけない。訂正しましょう(笑)。「ワインをどうぞ」と持ってきます。「大事なお仕事中、すみません。それではごゆるりとご歓談ください」
レーモン(白幡):うーん、呼びつけたはいいが、プレイヤーは何を話そうか全然考えてなかった(笑)。
一同:(ズッコケる)
レーモン(白幡):いや、ここはあんまり難しく考える必要はないか。「十字軍の連中が、どうも攻城兵器をこしらえようとしているらしく、その対策を立てねばならぬ」と。
エスクラルモンド(岡和田):ここでエスクラルモンドを登場させたいところですが(ルールブックを読む)。ああ、エスクラルモンドは小宮さんの支援キャラクターですね。ピエール・ロジェも小宮さんですから、原則的に二人は同じシーンに出せません。
ピエール・ロジェ(小宮):あ、そうなんですね。
エスクラルモンド(岡和田):参加者の合意があれば出してもかまわないと思いますが、まだ序盤なのでルールに忠実に進めましょうか。ここはエスクラルモンドじゃなくて、フィリッパだったということにしましょう。
フィリッパ(松本):了解です!
コルバ(岡和田):で、コルバはフィリッパにもワインを渡すのですが……。コルバはフィリッパとは口を利かないわけです(笑)。
フィリッパ(松本):フィリッパのキャラクターカードの2番目の質問、「どうしてあなたは、母のコルバと口を利かないのか?」ですね。
ここはワインを受け取らないで、そっぽを向いていましょう。
■ピエール・ロジェはダメな子?
コルバ(岡和田):「どうして、そんな態度なの? 昔はあんなに良い子だったのに」
フィリッパ(松本):それには答えず、怒った顔で無視しておきます。
ピエール・ロジェ(小宮):これには「いつものことだ」と思って流しておきます(笑)。
レーモン(白幡):ここは、ピエール・ロジェのキャラクターカードの質問1の「人々はどうしてあなたに従うのか?」に絡めて、「嫁も御せぬお主に、どうして人々は従うのかな」と嫌味が言っておきましょう。
ピエール・ロジェ(小宮):嫌な義父ですね(笑)。ここは嫌味で返しましょう。「さあ? ただ、人は血筋に従うと言いますからね」と、レーモンに「あなたは血筋で領主やってるんでしょう」と釘を刺しておきます。「血筋で人を支配するのは悪いことじゃない。大事なのは、人をどこに導くかではありませんかな?」とフォローもしておきます(笑)。
コルバ(岡和田):すかさずコルバが割って入って、「まあまあ、殿方はなかなか難しい話をなさっているようですが、いまは内輪モメをしているような時期ではないのでは?」
ピエール・ロジェ(小宮):「そうですね、こっちも聞かれたから答えただけで、別に含むところがあるわけではありません」
コルバ(岡和田):そこで、コルバは思わせぶりな目配せをピエール・ロジェにします。実は昔、レーモンとピエール・ロジェはコルバをめぐって争ったことのある仲だったんです! しかも、いとこ同士で。
一同:「え~っ!!」
ピエール・ロジェ(小宮):娘と結婚しているんだけど、本当は母親が好きだったと(笑)。なんというか、ピエールは下半身をもうちょっとちゃんとコントロールしないとダメな子なんじゃないかな(笑)。ま、演じ甲斐がありますね。
コルバ(岡和田):ここでカット。次は健部さんです。
■欠席裁判
健部:シーンカードは、「何か古めかしく邪悪な感触」にしましょう。ここはさっきのシーンにつないで、ベルナールが乗り込んでいきます。
ベルナール(健部):「おい、襲撃するって聞いたぞ。どういうことだ」とレーモンに詰め寄ります。
レーモン(白幡):「当然ではないか。新しい攻城兵器が完成してしまえば、モンセギュール城塞を護るすべはなくなるのだから」
ベルナール(健部):「俺はいつだって先陣を切るつもりだ。だがな、ガルニエに気をつけないといけない。あいつは怪しい」
ピエール・ロジェ(小宮):「確かに去年、異端審問官のギヨーム=アルノーを襲撃した際、あいつは挙動不審だった。ベルナールの勘は鋭いから、無視はしないほうがいいですよ」と、レーモンに。
コルバ(岡和田):すかさずレーモンに耳打ちします。「実は、エスクラルモンドに悪い虫がつきそうなんです」
一同:(爆笑)
レーモン(白幡):ガルニエとレーモンの距離感はどうなんだろう……。うん、たぶんレーモンはガルニエをよく知らない。だからピエール・ロジェに向かって「ガルニエというのは、お前の部下か?」と聞きます。
ピエール・ロジェ(小宮):「直接の部下ではないが、傭兵として使っていますよ。ちょくちょく顔を合わせるが、確かに胡散臭い奴だった……」
フィリッパ(松本):「あなたたち、疑心暗鬼になるのはやめた方がいいわ。仲間同士、いがみ合っても仕方ないじゃない」
コルバ(岡和田):諌め方が私(コルバ)に似ていると思いながらも……。無視されて怒ってるので、「何言ってるの? あなたがあんまり言うこと聞かないから、せめてエスクラルモンドだけでもちゃんとした大人になってほしいんじゃない。その親心がわからないの?」とかき回します(笑)。
ベルナール(健部):「なんだなんだ、あんた随分ガルニエに優しいんだな。――もしかして、“そういうこと”なのか?」
フィリッパ(松本):「あなたたちに口出しされる筋合いはありませんけど」
ピエール・ロジェ(小宮):「ところがあるんだなあ。ガルニエはこっちを、ギヨーム=アルノーに売ろうとしていたのかもしれないわけだから」
フィリッパ(松本):「あの暗かったなかで、そんなことをしてるのがちゃんと見えたの?」
ピエール・ロジェ(小宮):「うーん、言われてみれば……」
ベルナール(健部):「いや、間違いない。俺はあいつに、何か古めかしく邪悪な感覚をおぼえたんだ」
一同:「おお~、シーンカードの使い方が上手い!」
ベルナール(健部):ここでシーンをカットして、ストーリーカードを引きますね。
(続く)
初出:「FT新聞」No.3977(2023年12月14日配信)