「『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(3)」

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『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(3)

 岡和田晃

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 本リプレイは、中世の異端カタリ派を演じるRPG『モンセギュール1244』(フレデリック・J・イェンセン著、岡和田晃訳、ニューゲームズオーダー)のプレイ光景をまとめ直したものです。連載第2回は、SF Prologue Waveに採録されています(https://prologuewave.club/archives/10175)。未読の方は、そちらを先にお読みください。

■主要キャラクターを決定

岡和田:アクト1に入る前に、主要キャラクターを決めましょう。この主要キャラクターは、アクト1に登場するとともに、ゲームの終了時まで主要キャラクターは死にませんが、終了時には「柱に縛られて火刑に処される、異端審問官に懺悔をして改宗する、夜闇に紛れて逃亡する」のどれかを最終的に選ばねばなりません。
 なお、主要キャラクター陣のうち、最低1人は火刑に処され、夜闇に脱出できるキャラクターは最大1人までです。
 また個々のキャラクターカードには3つの質問事項が記されていますが、主要キャラクターを演じている間に、これらの質問の答えを出していくことで、その特徴を肉付けしていくことが推奨されています。

白幡:私はやはり、プロローグに登場したガルニエを主要キャラクターにしますよ。

岡和田:私はプロローグでは異端審問官ギヨーム=アルノー役をジャックしただけでしたが、セシルで行きます。

松本:どうしようかなあ。フィリッパはあまり発展性なさそうなので(笑)、もう1人の方、少女ファイユで行きます。

小宮:発展性(笑)。

大貫:まあ、痴情のもつれが発生しかけてましたからね(笑)。

小宮:私はそのままピエール・ロジェで。

大貫:じゃあちょっと考えさせてください。

一同:(主要キャラクターと支援キャラクターを、各自ああだこうだと言いながら選んでいく)。

■「アクト1:包囲開始」の開始

岡和田:決まりましたね。次の手番プレイヤーとしてシーンをセッティングするのは白幡さんですね(黄色い十字架を渡す)。白幡さんは「アクト1」を読み上げてもらえますか。アヴィニョネの暗殺は実際にあった事件らしいのですが、その1年後の話ですね。

白幡:はい。「アクト1:包囲開始」と。「このアクトで、モンセギュール城塞とカタリ派の信者たちが紹介される――1243年5月」。

一同:おおお!

白幡:「澄んだ空に太陽が燦々と輝くとき、モンセギュールでの戦いが始まった。山頂からは、敵勢がはっきりと見える。かなりの数だ。5000? いや、おそらく10000? 徐々に、十字軍が山裾に集結しているのだ。モンセギュールは外界から遮断された。包囲戦が始まったのだ」

岡和田:いい感じですね。ここからアクト1を始めますが、そろそろ主要キャラクターは決まりましたか? レーモンを選んだ人、います?

大貫:私はやはり、モンセギュール領主レーモン・ド・ペレーユを主要キャラクターにすることとします。

岡和田:では、レーモンは背景シート「モンセギュール」があらかじめ渡されていますが、その内容を、他の参加者に説明してください。

大貫:わかりました。「モンセギュールは、ピレネー山脈の山頂部、標高約900メートルのところに位置している。山の端は、あらゆる方向において、ほぼ垂直の断崖絶壁となっており、わずかに南西部のみ比較的傾斜が緩やかだ。ここには3つのほぼ平行に配備された防壁が建てられている。山の突端部は東側だ。この方向でモンセギュールにもっとも近い部分は急峻で、というのももともと城塞を建設する際に、資材を切り出すのに用いたからである。少し離れた箇所には前哨基地がある。さらに離れ、遠く北西の側にある木々が生えた突端部には、監視塔が建てられている。
 中庭にある2つの門はどちらも、それらを取り囲むかのように上方で吊されている木製の歩道からよく見渡せる。東に向かって、水平の重厚な梁の上に、木の台座が吊されているのだ。城塞のすぐ北の段地には、いくつもの避難場所が設けられている。
 中庭には、堅牢な石壁へ寄りかかるように、いくつもの掘っ建て小屋が建てられている。馬小屋もある。3つの階段が、城壁の上部に沿って、木製の要害に通じている。北西には、城主とその家族が住まう主塔がある。入り口は2階にあり、木の階段で行き着ける。城塞の貯水塔の下には大きなアーチ状の部屋があり、そこは年間を通じて雨水を貯めておく貯水層となっている。塔のてっぺんからは、山裾の村が見える」。
 ――なるほど、こうして背景を共有していくことで、知識がない人でも舞台の様子がわかってくるというわけですね。

白幡:では、アクト1の説明を続けますね。「夏の間は、包囲された人々は意気軒昂としていた。食べ物や飲み物は充分にあるし、補給部隊は容易に敵の防衛戦を突破できる。歌え踊れの祝賀の席が催される。完徳者は救済の道へと通じる信仰を説く」。

岡和田:ありがとうございます。それではプロローグと同じ要領でシーンをセッティングしていきますが、アクト1は参加人数だけのシーン、つまり6シーンもあります。自己紹介がてら、気楽に回していきましょう。白幡さんは3枚のシーンカードのどれかを読み上げて、発生する日時と場所、目的と状況、登場キャラクター等を決めていきます。

白幡:いきなりやることが増えましたね。

岡和田:ガルニエを登場させて設定を詰めていくのがいいでしょう。回想シーンを多少織り交ぜてもかまいません。

■いきなり急展開

白幡:わかりやすいところで、「女の笑い声」のシーンカードを選びます。

岡和田:そのカードの内容が、このシーンをいわば象徴するわけですね。あとは、発生する日時と場所、目的と状況、登場キャラクター等を決めていきます。序盤も序盤なので、何をやってもらっても問題ありませんよ(笑)。

白幡:じゃあ敵の防衛戦を突破した、まさにそのあたりの時期にします。外部から補給物資が届いて、「カタリ派の部隊が到着し、諸君は救済されるであろう」というメッセージが添えられており、周囲は浮かれています。その様子を見て、完徳者が集会を開こうとしている場面としますよ。

岡和田:ここで登場するのは誰かを決めてください。

白幡:少なくとも傭兵のガルニエ。そしてガルニエが愛する若い娘のエスクラルモンドと……。何人までOKなんですか?

岡和田:別に上限があるわけではありませんが、1つのシーンで主要キャラクターと支援キャラクターを同時に操ることはできないという縛りはあります。ただ、これは自己紹介を兼ねているので、少人数でサクサク回す方が楽かな。

白幡:では男の完徳者(ペルフェッチ)であるベルトランと、その嫁の……いや、完徳者は結婚できないから、嫁じゃない(笑)。女性の完徳者(ペルフェッチャ)であるセシルも登場させます。

ガルニエ(白幡):神妙な面持ちで、「あんな呑気な伝言を信用してはならん。俺の戦場の経験からすると、この要塞は長くは保たんから、早く脱出すべきだ」とエスクラルモンドに向けて説教をします。

エスクラルモンド(小宮):エスクラルモンドは戦場についてはまったく知らないので、ガルニエをあまり信用しません。「なんでみんな大丈夫だと言ってるのに、水をさすことを言うの? わたしを家族から引き離そうとしているんでしょう?」

セシル(岡和田):そこに割り込みましょう。「まあまあ、包囲戦は始まったばかりですから。異教徒たちも、いずれは真の信仰に気づくに違いありません。急いては事を仕損じますよ」と。
 そしてガルニエに向き直り、「たとえ逃げ延びて、わずかに肉体の生を保ったからといって、何になりましょう。大事なのは真の信仰を貫徹することなのですよ。それでこそ、魂が地獄に堕ちることを免れられるのですよ」

エスクラルモンド(小宮):「さすがセシルさま!」

ベルトラン(大貫):私も頭ごなしに説教をします。「そんな態度は許されるものではないぞ。悔い改めるか、この要塞を出ていくかだ」

ガルニエ(白幡):「ふん。地獄だか何だか知らねえが、俺の愛は本物なんだぜ」と捨て台詞を残して去っていきます(笑)。

一同:展開が早い~(爆笑)。

エスクラルモンド(小宮):「それでこそ完徳者さま! 私たちの信仰は永遠ですわ」

白幡:ここでシーンを終了します。

岡和田:このときのシーンカードはとっておいて、あとでナレーション権を奪うときに使うこともできますよ。

■中世の子どもは「小さな大人」?

岡和田:それでは手番プレイヤーは松本さんになります(黄色い十字架を回す)。シーンカードを補充して、と。どれにしますか?

松本:ファイユを主要キャラクターにしているので、「子どもの泣きわめく声」で。おばのアルセンドと、弟のアミエルがいるあたりで話をしているシーンとします。

岡和田:いい感じですね。アミエルは支援キャラクターで、一応の担当は大貫さんですが、登場していないプレイヤーがジャックして演じてくださって大丈夫ですよ。

ファイユ(松本):弟のアミエルが泣いている声がするので、「どうしたの。なぜ泣いているの?」と訊ねますね。

アミエル(大貫):「なんか、今日はみんながすごく物々しい雰囲気で、嫌な感じなんだ」

ファイユ(松本):「大丈夫。この砦は絶対に落ちないってみんな言ってるし、心配することはないわ。ねえ、おばさん」

アルセンド(健部):「そうね……」と、曖昧に言葉を濁して「あなたのことは、私が守ってあげるわ。どんなことをしても」

ファイユ(松本):「おばさんもそう言ってくれているから、安心して。ご飯を配っているみたいだから、もらいに行こうか」。ではここで、平和な場面はあまりなさそうだから、ここでアミエルのキャラクターカードにある質問事項を挟んでみます。「ところで、アミエル、あなたは大人になったら何になりたいの?」と訊ねます。

岡和田:アミエルは主要キャラクターじゃないんで、無理に決める必要はないみたいんですが、答えておくと設定に厚みが出ますね。

アミエル(大貫):プレイヤーとしては、この状況でなかなか将来の展望を描くのは難しいと思うんですが、キャラクターとしては「ぼくね、ピエール・ロジェのおじちゃんみたいに、カッコいい戦士になりたいんだ」

ファイユ(松本):「そうね、あの人は強いから」

アミエル(大貫):「もっといろんなことを、ピエール・ロジェのおじちゃんから教わりたいな」

ファイユ(松本):「うん、今のうちに色々と教わっておくといいと思うわ」

アルセンド(白幡):アミエルをビンタして、「あんな奴に憧れるなんて言うんじゃないわよ!」ピエール・ロジェは私の「客」として私の身体を買っていくからですね。アルセンドは健部さんの支援キャラクターですが、ここはジャックさせてもらいました(笑)。

健部:面白いから、どんどんやっちゃってください(笑)。

一同:(爆笑)

ピエール・ロジェ(小宮):この場にいないんですが、思わず突っ込みます。ビンタまで(笑)。

アルセンド(白幡):そりゃ中世ですもん、暴力的ですよ(笑)。

ピエール・ロジェ(小宮):そうか……(笑)。

アミエル(大貫):これでアミエルは、また泣きわめきます。

ファイユ(松本):「またアミエルが泣いちゃったよ! おばさん、そんなことで叩かなくていいでしょ」

アルセンド(白幡):「いい、二度とあいつの話はしないこと」。これでアルセンドのキャラクターカードの質問にある、「ピエール・ロジェと寝るとき、あなたは何を感じるか?」に答えたことになりますね(笑)。

ピエール・ロジェ(小宮):そんなに嫌わなくてもいいのに……(笑)。

ファイユ(松本):ようやく泣き止んだアミエルを連れて、食事をもらいに行きます。ここでシーンをカットしますね。

(続く)

初出:「FT新聞」No.3949(2023年11月16日配信)