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『モンセギュール1244』リプレイ~中世主義研究会編(2)
岡和田晃
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本リプレイは、中世の異端カタリ派を演じるRPG『モンセギュール1244』(フレデリック・J・イェンセン著、岡和田晃訳、ニューゲームズオーダー)のリプレイです。連載第1回は、SF Prologue Wave(https://prologuewave.club/archives/10147)に採録されています。未読の方は、そちらを先にお読みください。
□プロローグ「アヴィニョネの暗殺」の開始
プレリュード「アルビジョワ十字軍」が読み上げられた後、参加者はそれぞれ、12人の作成済キャラクターから、どの人物を演じたいのか、2人ずつピックアップする。関連した背景シートも同時に受け取る。
岡和田:さて、選び終わりましたね。では、ここからプロローグ「アヴィニョネの暗殺」が始まります。全体で1シーンのみで構成されている、短いものです。ルールブックの8ページにリプレイがついているのですが、この通りにやらなくてもかまいませんので、ご安心ください。
まず、「黄色い十字架」があります。カタリ派の信徒を示すオクシタニア十字のことなのですが、これはボードゲームでよくある手番プレイヤーを示すマーカー。これを、ピエール・ロジェを演じる小宮さんにお渡ししますね。
それでは、小宮さん、続いて「アヴィニョネの暗殺」と題したプロローグを読み上げてもらえますか。
小宮:この文章を読み上げればいいんですね。(シリアスな声音で)「血で血を洗う復讐がなされる処では、悲劇が始まる――1242年5月」
一同:おお~。雰囲気出ますね。
小宮:なんだか照れますね……。続けます。「近隣の小さな街であるアヴィニョネから、手紙を携えた使者が到着した。地元の領地代官(バイイ)アルファロはフランス王に忠誠を誓っていたものの、秘密裏にカタリ派の敬虔な信徒となっていた。手紙によれば、忌み嫌われている異端審問官のギヨーム=アルノーがアヴィニョネに来る道中で、数日滞在の予定だという。誰かが異端審問官を害しようと試みるなら、領地代官(バイイ)は衛兵をして別の方策を探らせたいと思っている」と。
岡和田:はい、ありがとうございます。このシーンに、後にモンセギュール砦の指揮官になるピエール・ロジェは参加が確定しています。このゲームは1シーンで1キャラクターしか受け持つことができませんから、今回はピエール・ロジェのみを演じることになります。
ピエール・ロジェ(小宮):りょーかいです。
■最初のシーンの開始
岡和田:次に、24枚あるシーンカードの山札(薄褐色の小ぶりなカードの山)から、3枚を引いていきます(マウスポインタを動かす)。
ピエール・ロジェ(小宮):おお、オンラインでもちゃんとカードを引けるんですね。
大貫:「静かな小川の流れに赤黒い血が混じる」、「女の笑い声」、「子どもの泣きわめく声」ですか。「声」が2つもありますね(笑)。
岡和田:このシーンに、誰を登場させていくかを決めていきましょう。厳密には、シーンプレイヤーは、「いちばん張りのある声」のプレイヤーが黄色い十字架を渡されて開始することになっているんですが(笑)、まあ参加確定しているピエール・ロジェの小宮さんでいいでしょう。
ルールブックの6ぺージに書いてありますが、このゲームではシーンをセッティングするプレイヤーが、擬似的なゲームマスターの役割を担います。シーンの発生する日時と場所や、シーンの目的と状況を手短に説明します。それから、最初にシーンへ登場するキャラクターを自由に決めていけます。
シーンの登場が推奨されているのは……。
ベルナール(健部):俺、騎士ベルナールだよ(笑)。俺、呼ばれているよ? プロローグのところに、わざわざ「ベルナールは復讐の味を知るのか」って書いてあるから。
ピエール・ロジェ(小宮):では、「血で血を洗う復讐」なので、ここは出ていただきたいです(笑)。
岡和田:あと、他に出たい方も出られます。あまり多すぎると管理も大変ですので、私は持ちキャラを登場させるのはやめて、基本、ルールの説明をしていきますね。
こういう場合、誰を連れて行くかも、シーンをセッティングする人が仕切って決めていただくのが楽ですね。
場に3枚出ているシーンカードから1枚選んで、それに従って場を演出していくわけですが、その流れに見合うようなキャラを登場させるということです。
ベルナール(健部):残った2枚のシーンカードはどうするの?
岡和田:とりあえず場に残しておき、次のシーンをセッティングする際の選択肢としてペンディングされます。
ベルナール(健部):後で使われるかもしれないということね。
ピエール・ロジェ(小宮):ここは復讐なので、「静かな小川の流れに赤黒い血が混じる」のシーンカードを選びましょう。
岡和田:では、1枚出したので、新しくもう1枚引いてください。ちなみに、こういう不穏な感じのカードしかありません(笑)。
ピエール・ロジェ(小宮):確かに、ほっこりするものがあったら、それはそれで雰囲気に合わないかも(笑)。
岡和田:それで、このシーンカードの描写を盛り込んで演出することが推奨されています。「カット」と言うまで語り続けることができます。厳密には出したシーンカードを手札にしてナレーション権の横取りもできるんですが、このシーンでは不要でしょうね。
ピエール・ロジェ(小宮):面白い(笑)。
■演出はどうすれば?
岡和田:それでは小宮さん、アヴィニョネのギヨーム=アルノーを襲いに行く場面を演出してください。
ピエール・ロジェ(小宮):えっ、演出ってどうすれば? 襲撃する前の場面を選んでしまったりしてもOKですか?
岡和田:はい。ただ、1242年の5月と銘打たれているので、回想シーン等ではない限り、あまり昔にはしないほうがいいでしょうね。
ピエール・ロジェ(小宮):ではあらかじめ、ギヨーム=アルノーが道中、数日滞在予定ということを、恨みを持っているらしいベルナールに知らせます。「ギヨーム=アルノーがやってくるらしいぞ」と、
岡和田:そうそう、そんな感じです。なお演出の際に、キャラクターに同士の掛け合いを通じて、各キャラクターに割り当てられた3つの質問への回答を折り込んでいくことが推奨されています。
ピエール・ロジェ(小宮):なるほど。でも、難しいですね。(ベルナールの質問を見て)「どうして、他の誰もあなたの馬に乗れないのか?」とベルナールに訊いても変ですし(笑)。
ベルナール(健部):俺の馬は気性が荒いから、俺しか乗れねえんだよ(笑)。
ピエール・ロジェ(小宮):なるほど、乗ろうとしたら蹴られちゃうやつですね(笑)。ベルナールの2つ目の質問も気になります。「なぜ、異端審問はあなたがいない間に行われたのか?」
ベルナール(健部):俺は口が達者だから、いるときに審問すると言い負かされると思われてるんだよ(笑)。
ピエール・ロジェ(小宮):当意即妙!
岡和田:まあ、健部さんはベテランですから、こんな具合に、どんな無茶振りでもこうやって拾ってくれるわけです(笑)。
一同:(爆笑)
■フィリッパ、ガルニエの登場
ベルナール(健部):「ところで、あんたの嫁さんのフィリッパは大丈夫なのかい」
ピエール・ロジェ(小宮):ふぃり……っぱ? ああ、私の妻で、領主レーモンの娘ですね。
フィリッパ(松本):私が演じるキャラクターですよね。これって、キャラクターの性格は勝手に決めていいんですか?
ベルナール(健部):設定として書かれていること以外は、自由に決めていいんです(笑)。
ピエール・ロジェ(小宮):松本さん、私の嫁だったんだ(笑)。独身だと思ってた(笑)。てっきり、アルセンド(娼婦)との関係の方に目が行ってた。
フィリッパ(松本):でも、プレイヤー同士はともかく、キャラクター同士はあまり仲がよくなさそうですね(笑)。だって、質問に、「あなたのお腹のなかにいる子どもの父親は誰か?」って書いてありますから。
一同:(爆笑)。
ベルナール(健部):「ピエール、あんた家庭の方をちゃんと考えたほうがいいと思うぜ。俺はひとりもんだから気楽だけどよ」
ピエール・ロジェ(小宮):「フィリッパ、この話は後でじっくりしようじゃないか(笑)。後で、ゆっくりと」。
岡和田:ああ、フィリッパもついてきているんですね。
フィリッパ(松本):一応、夫に発破をかけていますからね(笑)。「このチャンスを逃しちゃだめよ」と。
ガルニエ(白幡):じゃあ、傭兵ガルニエはそれをこっそり聞いていて、異端審問官ギヨーム・アルノーにこのことを教えれば金になるんじゃないかとついていきます。
ベルナール(健部):えっ、敵に回るってこと?
ガルニエ(白幡):それは状況によります(ニヤリ)。
ベルナール(健部):それでもいいけど、ちゃんと愛しいエスクラルモンドのことを考えてくださいね(笑)。
■いきなりの裏切り!?
岡和田:いい感じですね。皆、一応はカタリ派の信者なんですが、信仰の深さは人によって全然違うので、そこが個性になるんです。
じゃあ出演するのは、ピエール・ロジェ、ベルナール、フィリッパ、ガルニエの4人ですかね。
ベルナール(健部):いや、出発前に、我々の精神的な支柱である、完徳者(ペルフェッチ)ベルトランの意見も聞きたいな。
ベルトラン(大貫):ピエール・ロジェから相談を受けると、ベルトランは堂々と後押ししますよ。「そういう状況は、大いに利用しなければならないだろう」と助言。
ピエール・ロジェ(小宮):よし、じゃあ、やるしかないな。ギヨーム=アルノーを狙って!
ベルナール(健部):小川に馬とともに潜んで、奴の通りがかるのを待ちます。
ピエール・ロジェ(小宮):待ち伏せして、警戒していないところをイッキにぶすり、と。
ガルニエ(白幡):ところがどっこい、ぼくは土地勘があるので、接触するだろう地点の前で、ギヨーム=アルノーと接触を試みます。
一同:なんと!
ガルニエ(白幡):プロローグのシーン設定案にも、「異端審問官は暗殺計画を知っているのか? カタリ派の信者たちは皆、暗殺に協力する考えを持っているのか?」と書いてありますからね(笑)。
岡和田:普通ならここで、ゲームマスターがギヨーム=アルノー役を演じるわけですが、このゲームでは、シーンをセッティングした小宮さんが決めてかまいません。
ギヨーム=アルノー(小宮):設定では「嫌われている」と書いてあるので、権力者に気に入られて採用されているだけの、あんまりお仕事的にはスペックが高くない、坊っちゃんみたいな人にしましょう。警戒しないで、のこのことやって来ます。
ガルニエ(白幡):接触するのに判定か何かいるんですか?
岡和田:このゲームはダイスを使わないので、これも話し合いで決めます。
ガルニエ(白幡):ぼくは運良く接触に成功し、「猊下を狙う者がいるという噂が、地元では流れています。順路を変えて、別の街に行かれてはいかがでしょう」と。
ギヨーム=アルノー(岡和田):(ふんぞり返って)「何だと? 下々の者の分際で、我が行く手を遮ぎろうとするのか?」
一同:(爆笑)
岡和田:こんな感じで、主要キャラクター以外は随時、ジャックしてかまいません(笑)。私のようにシーンに登場していないプレイヤーがやってもOKです。
フィリッパ(松本):なるほど……。
ガルニエ(白幡):「しかし猊下、ここは異端者がウヨウヨしている土地でして……あの小川の向こうにも、異端の者が刃を携えて、猊下を狙わんとしておるのですぞ」(身を乗り出す)
ギヨーム=アルノー(岡和田):「おお、臭い、臭い、下郎が、近寄るでない!」
■シーンをカット
ピエール・ロジェ(小宮):「なんか、まごまごしているな、いま攻撃のチャンスじゃないか?」
ベルナール(健部):「ガルニエが喋っている隙に後ろから襲おう」、馬に鞭入れて突撃します。
ガルニエ(白幡):ここは戦場を生き延びてきた直観で、マントを翻して一目散に逃げます(笑)。
フィリッパ(松本):私はそれを見て、退路を確保する感じですね。
岡和田:こんな感じでいつまででも続けていいんですが、映画みたいに適宜、シーンをカットしていただけるとメリハリがつきます。
ベルトラン(大貫):シーンをカットする前に確認しておきたいんですが、ガルニエがギヨーム=アルノーと通じていたのは、ここにいる面々は認識しているんですかね?
岡和田:それは参加者の皆さんが相談で決めていきます。最終決定権はシーンプレイヤーで。基本、プレイヤーがついているキャラクターを殺すには殺される側の同意が必要ですが、それ以外はすべて、流れで決めてかまわないんですよ。
フィリッパ(松本):これは当然、皆が見ているでしょう(笑)。
ピエール・ロジェ(小宮):それでは、ガルニエが誰かと話しているのは見えたことにします。何を交渉していたかまではわかりませんが……。ここで、シーンをカットします。
岡和田:では、次に左隣のプレイヤーがシーンをセッティングできるプレイヤーになります。なんと白幡さんです(笑)。
一同:(爆笑)。
岡和田:では小宮さんは、ストーリーカードの山札から1枚引いて、手札にしてください。これは他のプレイヤーに見せてはいけません。ストーリーカードには、変化や緩急をつけるためにストーリーに導入できる要素が書かれているんですよ。ユドナリウムではカードを右クリックし、「自分だけ見る」というのを選ぶことができます。
小宮:ほんとだ! ふむふむ、なるほど……。おおう~(大げさなリアクション)。
一同:うわ、気になる~。
岡和田:これでプロローグは終わりですね。続いてアクト1に入っていきます。
一同:楽しみ~。
(続く)
初出:「FT新聞」No.3921(2023年10月19日配信)