はい。反省しています。嘘じゃないです。
そうですね。どうしてやったのかと訊かれると、腹が立ってとしか答えようがなくて。すみません。からかってなんかいません。
ママが可哀そうで仕方がなかったんです。もちろんわたしもまだ気持ちはおさまりきっていません。犯行は深く反省していますが、複雑です。
幼なじみの親友が、なんとパパの愛人だったんですからね。わたしだってあの子をずっと妹みたいに可愛がってきたというのに、裏切られた思いでいっぱいです。あぁ、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
喫茶店で何気なく彼女と話しているときにそれがわかり、わたしはすぐ頭に血が上って条件反射的に刺していました。
凶器はそう、「お母さん指」です。使いたくなかったんですよ、本当は。とてもとても後悔しています。
今はこうやって包帯でぐるぐる巻きにしていますが、わたしのここは、生れ付き先端がナイフみたいに鋭利なんです。そうです。いわゆる「人差し指」です。
わたしの場合は差すという漢字が、ナイフで刺すの方の字を使って「人刺し指」と書くとピッタリだと思います。わたしはずっとそっちの漢字の方が正しいと思っていましたもの。ええ、それでズブリです。彼女は出血多量で……。
でも、店の人がわたしをすぐに取り押さえなかったら、彼女は亡くなってなんかいませんでした。それは確かなことです。
わたしは「お母さん指」で刺した後、「お姉さん指」を使おうと思っていました。今さらと言われるでしょうが、本当です。「お姉さん指」を使う時間がなかったことが悔やまれてなりません。「お姉さん指」は、ええ、これですね。有名な童謡の歌詞にもありましたよね。
取り調べ中に変なことを言いますが、刑事さん、口元近くが少し切れていますよ。カミソリでついた傷でしょうかね。治してさしあげましょうか。指をそっとあてるだけです。すぐです。
わたしの「くすり指」は効果てき面ですから。