「2023年8~9月開催の『エクリプス・フェイズ』関連イベント・レポート!」岡和田晃

2023年8月~9月開催の『エクリプス・フェイズ』関連イベント・レポート!
 岡和田晃

 2023年の8月~9月にかけて、『エクリプス・フェイズ』がらみのイベントが複数催されましたので、その様子を簡単にご紹介して参りましょう。
 まずは8月5日に浦和コミュニティセンターで開催された第61回日本SF大会Sci-con2023。
 こちらでは、「今どきの海外TRPG事情~古典作品の最新版からインディーゲームまで~」と題したパネルが、朱鷺田祐介氏・岡和田晃・待兼音二郎氏・中村俊也氏のメンバーで開催されました。
 広い会場にたくさんのお客さんが詰めかけ、盛況でした。

 ※写真提供:結城充考氏 

 私(岡和田)は司会として参加したのですが、『エクリプス・フェイズ』はキーとなる作品だったと改めて確認できました。
 なぜならば、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト)や『シャドウラン』(新紀元社)のようなビッグゲームの最新版の特徴と、『モンセギュール1244』(ニューゲームズオーダー)のように「ナラティヴ系」と呼ばれるインディーゲームの要素を、『エクリプス・フェイズ』はあわせもっているからです。
 伊野隆之氏からは発売されたばかりの『ザイオン・イン・ジ・オクトモーフ~イシュタルの虜囚、ネルガルの罠 〈エクリプス・フェイズ〉シェアード・ワールド』(アトリエサード)について、岩田恵氏からは、キム・ニューマン《ドラキュラ紀元》シリーズ(鍛治靖子訳、アトリエサード)に関する話もいただき、豪華なイベントになりました。
 
 9月3日には、朱鷺田祐介先生オンリーコンベンション(主催:TRPGサークル幻界堂)がタワーホール船堀で開催。
 朱鷺田氏が『深淵 試作第3版』 を、西上柾氏が『シャドウラン 5th Edition』を、そして私が『エクリプス・フェイズ』をゲストとしてGMし、終了後はトークショーを行いました。
 また、幻界堂スタッフのGMで『深夜三流俗悪映画の襲来!!!』、『ブルーローズ・ネクサス』、『ザ・ループ TRPG』のセッションも行われ、それぞれ好評を得ました。

 『エクリプス・フェイズ』については、未訳シナリオ『EGO HUNTER』をプレイ。プレイヤーが演じるキャラクターの全員が、「アチジマ・ヤイ」という同一人物のβ分岐体(フォーク、わかりやすく言えばクローンのこと)だという設定の、SF-RPGならではの異色作で、個別ハンドアウトも存在します。
 作成済みキャラクターは8人用意されていますが、今回は、メントン(知性が強化された義体)、ケース(格安の合成義体)、スプライサー(遺伝子が強化された標準に近い義体)、ネオ類人猿(知性化種の義体)の4体を用いました。
 個別ハンドアウトのロールプレイ指針が興味深いものなので、以下、拙訳にてご紹介しましょう。

◯アチジマをロールプレイする
 さあ、挑戦しよう。アチジマの分岐体を演じるのは、きみだけではないのだ。アチジマの性格については、都度シナリオで説明があるかもしれないが、プレイヤーに与えられる情報は限られており、各プレイヤーは各々のやり方でアプローチすることなる。全員が同じ人物に見えるように努力することが奨励されるが、完璧にできずとも問題ない。様々な理由で、キャラクターの性格の異なる側面が現れるものだから。ニューラル・プラニング(訳注:分岐体の作成)のプロセスは完璧とは言い難く、それぞれの分岐体は別の方法で生成されるため、ばらつきが生じることがある。その上、分岐の時間が長ければ長いほど、経験や性格が互いに乖離し、別の個体になっていく。事実、こうした乖離のプロセスは、このシナリオが推奨するロールプレイの重要な要素なのだ。
 重要なのは、もとは同一人物のキャラクターを演じようと努力することだ。1つの方法としては、互いのプレゼンテーションを参考にし、真似し合うことだ。あるプレイヤーが特定の話し方をしたら、それを真似ること。アチジマが気の利いたフレーズを口にしたら<きみもそれを採用するとよい。あるプレイヤーがアチジマの過去の思い出を語り出したら、その話を自由に膨らませればいい。ある意味で、アチジマは集合的なアイデンティティを有する存在で、きみと他のプレイヤーが協力し合ってアチジマに生命を吹き込むことによって、アチジマはより豊かな存在として語られるようになるわけだ。

 ――いかがでしょう? 世にストーリーゲームは多々あれど、かようなロールプレイはSF、さらには『エクリプス・フェイズ』ならではのものとしても過言ではありません。
 9月30日頃発売の「Role&Roll」Vol.226では、拙作の『エクリプス・フェイズ』用ソロジャーナルが掲載されます。ジャーナルRPGとは、その都度なされる指示をヒントにしながら、あたかも日記(ジャーナル)をつけるように文章を綴っていくことで、自分だけの冒険を紡ぎ出すスタイルを指します。描写駆動と呼ばれるスタイルのRPGがベースになった、いま注目を集めているジャンルです。
 ソロジャーナルの代表作には、SF大会で登壇してくださった中村俊也氏が翻訳された『サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイア 千歳の吸血鬼』(フロッグゲームズ)(https://www.4gamer.net/games/697/G069769/20230403020/)があります。ぜひ、体験してみください。
 
 また、2023年11月3日には、『エクリプス・フェイズ』のデザイナー、ロブ・ボイルの来日に伴う歓迎イベントが計画されています。詳細は決定次第、私のSNSで紹介してまいります。ご注目ください。