「同窓会X」山野浩一

(紹介文PDFバージョン:dousoukaixshoukai_okawadaakira

 好評〈山野浩一未収録小説集〉の第六回は、「箱の中のX」、「X塔」に続く完結編「同窓会X」です。
 「月刊タウン」3号(アサヒ芸能出版、一九六七年三月号)に掲載されました。この号は、山野浩一さんのお手元に残っていたため、蒐集することができたものです。
 〈山野浩一未収録小説集〉に収めた「自殺の翌日」にも共通するモチーフですが、「殺人者の空」は本作の変奏とも言えるかもしれませんね。
 この号で、「四百字のX」シリーズは一段落したようです。山野浩一さんの未収録小説は、まだまだ数があるのですが、次号をどうするかは検討中。ご意見・ご希望があれば、お寄せください。
 手前味噌で恐縮ですが、「SFマガジン」二〇一七年一〇月号には私の追悼文「ニューウェーヴは終わらない」が載り、「TH(トーキング・ヘッズ叢書)」No.72では、連載「山野浩一とその時代」が始まりました。
 また、「映画芸術」461号には、足立正生さんによる山野浩一さんの追悼文「強制送還された私の「社会復帰」に力を添えてくれた人」が載っています。新事実が沢山書かれており、お勧めできます。(岡和田晃)

(PDFバージョン:dousoukaix_yamanokouiti
 高校時代同級だったSが死んだと聞きましたので、葬式に出ました。古い友人たちに逢えてなかなか有意義な時間を過しました。帰りに一人になってから、ふと五年前にSが自殺したという話を聞いていたように思ったのです。しかし、むろん間違いでしょう。葬式があった以上Sはその前日まで生きていたはずです。そしてそのままそのことを忘れてしまいました。
 五年たちました。或る日新聞広告にSの死亡通知が出ていました。今度ばかりは同級生みんなが驚きました。さっそく出掛けていって確かめてみると、やはりSに間違いありません。葬式を主催しているのは五年前に結婚した彼の夫人でSの過去についてはよく知らないといいます。みんな訳の判らないまま葬式を済ませて帰りました。そして、また忘れてしまいました。どうでもいいことだからです。自分には関係ない以上どうでもいい……。
 また五年たちました。もうそろそろSの四度目の葬式がある頃です。

山野浩一プロフィール

 
山野浩一既刊
『鳥はいまどこを飛ぶか 山野浩一傑作選 Kindle版 』
『人者の空 山野浩一傑作選 Kindle版 』