(PDFバージョン:SFPrologueWave_hennrimakoto)
当サイトをご訪問頂き、まことにありがとうございます。
この度、我々が配信する無料のネットマガジン、『SF Prologue Wave』がついに公開される運びとなりました! ところで、「ついに公開される運びとなりました」といきなり言われても、ほとんどの方は何のことだかサッパリお分かりにならないと思います(汗)。ので、この場をお借りして、これまでの経緯について皆様にご説明をば申し上げたいと存じます。どのようなわけでこのサイトが誕生したか、ここに書き記しておきます。
このサイトが誕生することになった直接のきっかけは「SF系新人賞の休止」なのですが、その前に、まずはそれ以前の状況について軽くご説明しておかなくてはと思います。「日本SF新人賞」が誕生する以前、SFにはしばらく新人賞が存在しない時期がありました。小説で「SFでもOKな新人賞」はありましたが、SFを明に謳った新人賞というのはなく、当時いわゆるプロパーなSF小説を上梓したいと思ったら、「SFでもOKな新人賞」でまずはデビューして、何年か実績を重ねた後に徳間書店さんや早川書房さんなどの出版社に原稿を持ち込む、というルートしかなかったんです。しかしこれでは、SFになかなか新しい風が吹き込んできません。
そこでこの状況を憂慮された日本SF作家クラブの重鎮の方々が乗り出され、「日本SF新人賞」が設立されました。その道のりは決して平坦なものではなかったそうです。ところで、嬉しいニュースは更に続き、「日本SF新人賞」設立の少し後に「小松左京賞」という賞も設立されました。「小松左京賞」はプロアマ問わずの賞でしたので、厳密に言うと新人賞ではないのですが、実際には多数の新しい才能を世に送り出した、SF系新人賞としての素晴らしい機能を有しておりました。
「日本SF新人賞」と「小松左京賞」。この二つの立派な登竜門が、かつて日本のSFにはあったのです。
ですが、残念ながらこの状況は約10年でひとまず終了することになってしまいました。「小松左京賞」と「日本SF新人賞」は相次いで休止となることになってしまったのです。それぞれの賞にはそれぞれの事情があったには違いないのですが、これは実に残念この上ない事態であると申し上げざるを得ません。そして吹き荒れる“出版不況”の四文字。その前ではSFとて例外ではないのです。我々は今、大変厳しい状況に直面しています。
私は第5回の日本SF新人賞で佳作を頂戴してデビューしております。「SF系新人賞が休止になる」という知らせを受け取った時、とにかくまず思ったのが「このままSFがズルズルとじり貧になってゆくのはヤバイ!」ということでありました。そこで親交のある日本SF新人賞や小松左京賞出身者の方々から意見を聞いて、「とにかく、反省は反省として今後に活かしていかなくてはいけないが、それとは別に、今からでもまだやれることがあるんじゃないか?」ということを話し合いました。この時に「力を貸すよ」と真っ先に手を挙げてくれたのが八杉将司さん。その後も色々な方にご協力頂き、智恵を授けて頂きました。それでその後、この流れは大きく二つに分かれました。
一つは、“「日本SF新人賞」と「小松左京賞」の出身者で協力して、色々とやっていこう、できればデカイことをやろう”、というものです。そこで両賞の出身者で『NEO ─Next Entertaiment Order─ (次世代娯楽騎士団)』という名前のユニットを作り、今、色々と活動していこうとしています。『NEO』では私、片理誠が窓口係をやらせて頂いております。
もう一つが、“日本SF作家クラブで無料のネットマガジンを作って世間様に発信してゆこう、SF全体を盛り上げてゆこう”、というもの。それがこのサイト、『SF Prologue Wave』、です。このサイトでは八杉将司さんが編集長で、私は副編集長となっております。
で、その後もあれやこれやで色々なことがあったのですが、このサイトに限って言いますと、まず様々な先輩サイトさんよりご教示を色々と頂きました。それから「日本SF評論賞」出身者の方々にも力をお借りしています。すでに編集部にもお二人。SF作家クラブの重鎮クラスの方々にもご協力を頂いております。ビジュアル担当ということで、イラストレーターの方にも! 日本SF作家クラブのサーバーをお借りしていますので、システム管理者の方にも数多のお助けを頂いております。
その上で実は2010年の10月から2011年の3月まで、日本SF作家クラブの内々でテスト運用をもして参りました。そして2011年3月4日の日本SF作家クラブ総会で「公開するに差し支えなし」とのご裁断を頂き、一般公開できる運びとなりました。
ところがその後の2011年3月11日。皆様もご存知の未曾有の大震災が発生してしまいました。編集部の中からも「今、公開して良いのだろうか? 日本中が悲しみに沈んでいる時に、我々だけが浮かれるようなわけにはいかないのではないか?」、あるいは「今回の震災では津波の被害がすさまじかった。2011年に公開されるサイトの名称に“Wave”が入ってしまっていても良いものだろうか?」という意見が出ました。
この文章を書いている現在、2011年の4月となった今でさえ、そのあまりの損害の激しさ、無慈悲さのことを思うと、被災された方々にはかけるべき言葉すらも見つかりません。日本中が呆然と立ちつくすより他にない、きっと今はそんな状況。長い長い喪の途中。でもいつか、我々はこのどん底のような時代からも這い上がっていかなくてはならないはずで、もしここで私たちが前に進もうと足掻くことで、そういった復興になにがしかの寄与をすることができるのであれば、やはりやるべきなのではないか、今ここで批判を恐れて立ち上がらなかったら、ずっとこのまま立ち上がれなくなってしまうのではないか、そんな意見もまた出ました。そして私たちはこの意見を是としました。
また、名称についてなのですが、この「Prologue Wave」という名前は実は私が考えました(汗)。で、これはバラしてしまいますと、堀晃さんの名著『バビロニア・ウェーブ』からインスパイアされたものでした。この「Wave」は「レーザーの定常波」の「波」です。なので私も元々イメージしていたのは「水の波」ではなく「電磁波の波」、あるいは「周波数(wave band)」の「Wave」だったのでした。ですので名称はこのままとし、ただしサイトの説明文に『SF Prologue Wave(序章発信)』という和名を付与したものを掲げることで行かせて頂こう、ということになりました。この点、もしかしたらご不快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どうか悪しからずご承知おきくださいませ。なにとぞよろしくお願い申し上げます。
そんなこんなで様々な紆余曲折があり、どうにかこうにかここまで漕ぎ着けました。が、このサイトはまだ生まれたばかりのヒヨコみたいなもので、しかも日本SF作家クラブに所属している有志が自主的にボランティアで運営しているだけで、編集部にプロの雑誌編集者は一人もいません。誰もやったことがないんです。なのでたぶん、これからもあっちにヨロヨロ、こっちにヨロヨロという、大変に頼りない運営になるんじゃないかと思われますが、どうか長い目で見てやって頂ければと思います。
それと、私たちへのご意見やご感想等(仕事の依頼も大歓迎でっす!)がございましたら、投稿フォームより、ご遠慮なく、バンバンお寄せくださいませ。お待ちしております。
それでは、『SF Prologue Wave』、スタートです! 皆様に少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。これまでにお世話になった方々、そしてこれからもお世話になる方々に感謝を捧げつつ。
片理誠既刊
『エンドレス・ガーデン
ロジカル・ミステリー・ツアーへ君と』