『月刊アナログゲーム情報書籍「Role & Roll」Vol.145「『エクリプス・フェイズ』1人用入門ミッション 女博士エヴァ・イヨネスコの受難」』

執筆:待兼音二郎(『エクリプス・フェイズ』翻訳チーム)、監修:朱鷺田祐介(スザク・ゲームズ)、岡和田晃(『エクリプス・フェイズ』翻訳チーム)

 岡和田晃

 「Role & Roll」(アークライト/新紀元社)は、会話型ロールプレイングゲーム(テーブルトークRPG、TRPG)や、ボードゲーム、カードゲーム等のアナログゲーム(電源を使わないゲーム)を扱う月刊総合情報書籍です(2003年 Vol.1発売)。
 毎号、プロとして活躍中のゲームデザイナーやライターにより、様々なゲームの紹介やサポートがなされています。
 「SF Prologue Wave」でも、「Role&Roll」掲載の『エクリプス・フェイズ』関連記事は、継続的に紹介して参りました。

 今回ご紹介する「Role&Roll」Vol.145では、「『エクリプス・フェイズ』1人用入門ミッション 女博士エヴァ・イヨネスコの受難」が掲載されています。
 これは、まったく新しい試みです。パラグラフ選択式のソロ・アドベンチャー、すなわち楽しみながらルールを習得できるゲームブックとなっているわけです。

 秀逸なのは、たとえルールブックを持っていなくても、日本語版公式サイトからサマリーをダウンロードするか、「Role&Roll」Vol.92のルール・サマリーを用いて遊ぶことができるようにもなっています。
 なお、Vol.92は売り切れということですが、同号の『エクリプス・フェイズ』関係の特集記事は近々公式サイトでダウンロードできるようになる予定です。

 さて、今回のソロ・アドベンチャーの主役は、読者のあなた。あなたは「スカムの用心棒」となり、小惑星ニサ(44 Nysa)にあるエクストロピア・ステーションで、誘拐された要人の救出任務を請け合うことになります。戦闘時の敵の動きは自動処理できるようになっており、ゲームブックでは往々にして過剰に簡略化されがちな戦闘についても楽しめるようになっています。
 第1幕:情報収集、第2幕:救出戦闘という2幕構成になっているのですが、実は紙幅の都合で割愛された序幕があります。
 ミッションの依頼主であるファイアウォールのプロクシ、ジェスパーによる模擬戦闘のパートです。
 以下、待兼音二郎さんのブログに採録されていた序幕を、こちらでも紹介させていただきます。

◆序幕:ジェスパーによる模擬戦闘

 君にはこれが初のミッションなので、ジェスパーがチュートリアル戦闘の相手をしてくれる。この任務で想定される戦闘での戦い方のコツを手引きしてくれるというのだ。まず射撃戦の、次いで格闘戦の模擬戦をするという。

 ジェスパーのデータは、同じく公式サイトからダウンロードできる「タイタンの探検家」を用いる。なお近接戦の命中判定で使う〈刀剣〉がないが、これは50と見なす。

▼模擬射撃戦

 これは遠隔攻撃の基本的な処理と、再装填の仕方を会得するための模擬戦だ。ジェスパーと君が近距離(命中判定の修正0)で向かい合い、ひたすら実体弾兵器で撃ち合う。両者とも移動は一切行わず、戦闘は3ラウンドのみ行う。

 第1ラウンドはジェスパーの奇襲で始まる。彼は瞬間行動でアサルト・ライフル(AP -6、DV 2d10+6)を抜き、複雑行動で射撃する。続けて君の手番になる。同じく銃器を抜いて射撃することになるが、必ずヘビー・ピストル(AP -4、DV 2d10+4、SA/BF/FA)を使うこと。装弾数10発なのですぐに撃ち尽くし、再装填を強いられることになるからだ。

 速度2の君のみ動ける第2フェイズからは、瞬間行動を照準に当てて命中+10にできることを忘れないように。

 射撃モードは何がいい? 便利なのはBFだが、1フェイズに3×2の6発も消費するので、こればかり使っていると第2ラウンド早々に弾切れだ。そこで再装填が必要になる。通常なら瞬間行動で空のカートリッジを取り外して落とし、瞬間行動で新しいやつを抜き、複雑行動で装填だが、これだと1フェイズでは終わらない。急ぐなら自動行動でヘビー・ピストルを落とし、瞬間行動でサブマシンガン(AP -2、DV 2d10+3、SA/BF/FA)を抜き、複雑行動で射撃するといい。

 第3ラウンドで模擬射撃戦は終了し、両者ともにダメージや負傷はすべてリセットされる。

▼模擬格闘戦

 今度は「ショック・グローブ」で敵を生け捕りにするコツを教えてやろうとジェスパーが言う。模擬格闘戦のラウンド数は無制限。射撃と違って1フェイズに1回しか攻撃できず、敵の〈回避〉も半減値ではなくフルになるので、空振りが多くなることに注意しよう。

 第1ラウンドから通常のイニシアティブ判定をする。ジェスパーの武器はダイヤモンド・アックス(AP -3、DV 2d10+6)。君のショック・グローブ(AP なし、DV 1d10+3+ショック)は最初から手にはめているので、単分子剣(AP -4、DV 2d10+5)を落とせばすぐに使える。ここで「ショック攻撃」のルールを確認(ルール191P)。攻撃が命中すると、敵は《耐久値》(ダメージで減った現状値)+対エネルギー装甲値で判定をする。つまり、《耐久値》をある程度減らしてからでないと効果が見込みにくいと言うことだ。2回くらいは単分子剣で通常攻撃をしてから、ショック・グローブに切り替えるようにしよう。この戦法が最終戦闘できっと大きな効果を発揮するからと、ジェスパーは意味深に告げる。

 ここで近接戦闘のルール規定における注意点をひとつ。両手に武器を持ついわゆる二刀流の場合、通常は「利き手でない腕(逆手)を使用」による-20ずつの修正値が命中判定に累積的に課されていく(ルールP189の「複数武器の同時使用」より)ため、八本足のオクトモーフが四本足で身体を支え、残り四本すべてに武器を持った場合などはそれはもうえらいことになる。それを避けるためには「両手利き」の特徴(コスト:10CP)を取得しておく必要があるのだが、『エクリプス・フェイズ』の近接戦闘には、複数の近接武器での集中攻撃について一風変わったルールがある。

 「追加の近接武器」(ルールP189)がそれだ。それによれば、2本以上の近接武器で単一目標を攻撃する場合、すべてを単一の攻撃と見なして命中テストは1回のみ行ない、しかもその際、逆手武器による不利な修正はすべて無視される。つまり、「両手利き」の特徴がなくても複数の武器を有利に使えるのだ。そして攻撃のダメージは、追加の武器が1本あるごとに+1d10(最大でも+3d10)される。

 このことに気づいた君なら、単分子剣だけでなく、もう1本の近接武器であるワスプ・ナイフ(AP -1、DV 1d10+5)も抜いて二刀流で戦った方が多くのダメージを敵に与えられることに気がつくことだろう。ワスプ・ナイフを抜くことに瞬間行動がかかるので、場合によっては攻撃のための複雑行動を1回無駄にすることになるかもしれないが、ぜひ、模擬戦闘でいろいろと試してみてほしい。

 こちらの模擬戦も、終了後に両者のダメージや負傷はすべてリセットされる。

◆要訂正事項

 次いで、本文には一箇所、パラグラフミスがあります。

ビド映像再生装置装置

 エヴァ・イオネスコ博士の秘密にまつわる決定的なシーンの立体映像を投影する。これがあれば救出戦闘を情勢を一変させられるはずだが、第2場で#15にたどり着いていなければ情報不充分のため、この装置は使用できない。

 上記について、「第2場で#15にたどり着いていなければ」とあるのは、「#14」の間違いでした。お手元のソロ・アドベンチャーを訂正いただければと思います。

 「SF Prologue Wave」の小説を読んだら、ぜひ、実際に『エクリプス・フェイズ』世界に飛び込んでみましょう!
 あなたのクリエイティヴィティが、さらに刺激されること、間違いありません。

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