(PDFバージョン:kaasann_hayasijyouji)
「かあさん、俺だよ俺」
「どうした? 一郎かい?」
「そうだよ、一郎だよ」
「それにしては声が変だけど」
「風邪引いたんだよ。それより、大変なんだ。会社の集金の金を落としたんだ200万、あれがないと会社をクビになってしまうんだよ」
「あらまぁ」
「お願いだから、200万貸してくれよ。友達が受け取りに行くから」
「お前本当に、一郎かい?」
「疑うのかい、かあさん。一郎だよ」
「そうかい、だったら本人確認のためにマイナンバーをお言い」
「マイナンバー!?」
「そうだよ、お前だろ、不審な電話があったらマイナンバー確認しろって言ったのは」
「ええと、金を受け取りに行く、友人のマイナンバーでいいかな?」
「あぁ、いいけど」
「123412341234だよ」
「それが集金に来る友人のマイナンバーだね」
「そうだよ」
「間違いないね」
「間違いないよ」
「他人のマイナンバーを無闇に公開すると法律で罰せられるんだよ。お前は法を犯してしまったんだ、悪いことは言わないから、すぐに警察に自首しなさい……もしもし、もしもし」
「お姉ちゃん、何してんの?」
「ちょっとね」
林譲治既刊
『新戦艦〈大和〉
発進編』