「楽園追放 ―Expelled from Paradise― 」ノベライズ
作:虚淵 玄(ニトロプラス)
著:八杉 将司
出版社:早川書房
刊行日:2014/10/17
ISBN:978-4-15-031171-1
価格:670円
内容:
虚淵玄(ニトロプラス)×水島精二 注目のSFアニメ『楽園追放』、11月15日公開電脳世界の捜査官アンジェラは、謎のクラッキングを調査するため地上に降り立つ。話題のアニメを完全ノベライズ。
西暦2400年、地球はナノハザードによって廃墟と化し、人類の多くはデータとなって電脳世界ディーヴァで暮らしていた。
しかしディーヴァが、フロンティアセッターと名乗る謎の存在からハッキングを受ける。
ディーヴァの捜査官アンジェラは、マテリアルボディを身にまとって地球に降り立ち、地上捜査員ディンゴとともにフロンティアセッターの謎を追う。
虚淵玄(ニトロプラス)×水島精二の話題のアニメを完全ノベライズ。(早川書房HP書籍詳細より)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21171.html
劇場アニメ「楽園追放―Expelled from Paradise―」公式HP
http://rakuen-tsuiho.com/
著者・八杉将司コメント:
「映像作品を小説化して何が面白いのか」
このたび初めて映像作品のノベライズというのを書きました。
ところで、完成された映像作品があるにもかかわらず、どうしてその作品自体をノベライズつまり小説化するのか、疑問に思ったことはないですか。
メディアミックスという意味合いとなれば理由はいくらか考えられるのだけど、視聴者の中には映像作品を小説にした作品を読む意味がわからないという人もおられるんじゃないかと思う。
それを言ったら逆に小説を映像作品にする意味は? と問われるかもしれない。ただ、ノベライズはどこかしら一般の小説と比べてなんとなく毛色が違う感覚はありませんか。(ときどき原作小説がある映像作品をさらにノベライズするなんてのもあるし)おそらくは映像作品ありきの小説だからそう感じるのではないでしょうか。
ぼくはそんなノベライズを、特に小・中学生のころ、映画やテレビで作品を観たあといつも夢中になって読んでました。
理由は二つ。
一つは時代といえばいいのかな。ぼくは1972年(昭和47年)生まれで、子供のころはDVDもなければブルーレイもない。物心ついたころにビデオがようやく商品化されて、あれは中学のときぐらいだったかなあ、我が家にビデオデッキがきたのは。ちなみにベータマックス方式のやつ。
そんな時代に映像ソフトのビデオテープは一本一万円以上もするし、レンタルビデオ店もなかった。(高校生のとき近所にできたけど、置いてあるのは大半がVHS。ビデオ戦争のおかげで涙目だったよ、まったく! なおその店は一年ほどで泥棒が入って大半のビデオを盗まれたため潰れた)
とにかくそういうことで、今みたいに映像作品のソフトを簡単に入手することができませんでした。どれだけ面白くても、劇場公開が終わってしまったら、もう一度観るのに何年かのちテレビで放映される可能性に期待するしかない、そんな時代でした。
そりゃあ、ノベライズが手に入るなら飛びつくってもんです。作品のシーンを思い浮かべながらむしゃぶりつくように読みました。
でも、現在はDVD、ブルーレイ、ネット配信、至るところにあるレンタル店のおかげで、簡単に好きな映像作品を見ることができます。
そんな時代にもかかわらずノベライズを求める意味はどこにあるのか。
それが二つ目の理由にあります。
ぼくにとってノベライズは、映像作品の代替物以上の楽しみがありました。
それは文章だから、映像作品ほど時間の長さをシビアに考えなくていい小説だからこそ表現できる部分です。
たとえば映像作品では出てこなかった登場人物の内面、または省かれたセリフや人物、あの映像の裏で何があったのかを知ることのできる追加エピソード、設定の詳細な解説……それどころか物語そのものが衝撃的に変わっていることもありました。
それこそがノベライズを読む楽しみでした。
みなさんはどうでしょうか。
そんな楽しみを出来るだけ引き出そうと考えながら書いたのが、この劇場アニメ「楽園追放」のノベライズです。
とはいえ執筆にあたりアニメ本編は見てません。そのときは完成してないのだから当たり前だけど。(ゲラ校正中にゼロ号試写版は観ました)
ただし、ノベライズをするにあたり、制作からは脚本だけでなく、絵コンテ、世界観設定のメモ、軌道計算などが書き込まれたSF考証メモ、登場人物やロボット、小物、美術に至るまでの大量の設定資料、さらには仮アフレコが入った絵コンテ動画ファイルまでいただきました。それらすべてを踏まえたうえで執筆してます。
ぼくが創作した部分もあるのだけど(そもそもプロローグからして創作)、これら脚本や資料、メモからの解釈によるものです。クリスティンというキャラクターも創作とはいえ、アニメ本編や予告に登場する緑色の髪をしたショートカットの女性がクリスティンで、彼女をモデルに人物設定を起こしました。
また脚本にあった長セリフが映画の尺や表現の都合で削られている部分も小説用に文章を書き直してますが、なるべく省かずに入れました。
そんなわけでアニメ本編より「余計」なことを意図的にやってます。
でも、その余計さがノベライズの楽しみじゃないか……というようなことを思いながら書いたんだけど、よかったのかなあ。(もちろん虚淵さんや制作プロデューサーさんに内容のチェックはしてもらってます。小心者なのです)
劇場公開前に本は出るけど、そういうわけなのでアニメを鑑賞したあとに読むのもお奨め。
ノベライズならではの楽しみを味わっていただければ幸いです。
八杉将司既刊
『楽園追放
―Expelled from Paradise―』