「物語性の復活を目指して」片理誠

(PDFバージョン:monogatariseino_hennrimakoto
 電車に乗っていると「本当に時代は変わったなぁ」とつくづく感じる今日この頃です。

 以前の電車内での風景と言えば、学生は漫画、社会人は雑誌か文庫本、というのが定番だったものですが、もはや老若男女の誰もがスマホですな。あらゆる世代を席巻している感じです。あの浸透力は凄いですね。前なんか、向かいの座席に座っていた七、八人の乗客全員がそれぞれ自分のスマホを覗いていたという、コントみたいな場面を目にしました。座っている人全員が「じっと手を見る」状態っていう。でも違うんです、本当はスマホ見てんです。でももうそんな光景、さして珍しくもないですよね。

 この前もつり革につかまっていたら、左右に立っている人と向かいに座っている人の全員がスマホでパズルゲームやってました。流行ってますよねぇ、ソーシャルゲーム。年代も性別もバラバラなのに、皆が一心不乱にパズルゲームをやってるってのは、なかなか凄い光景でしたよ。

 そういえば昔の知り合いにテトリスが異様に上手い人がいて、その人はテトリスならワンコインでいつまででも遊んでいられるんです。何時間やっても全然ゲームオーバーにならないんですよ。凄まじい速さでブロックを積み上げて片っ端から消していっちゃうんです。途中で本人も飽きてくるらしくて、わざと失敗した組み方をして自分をピンチに追い込んでおいて「あと一回失敗したらゲームオーバーになってしまう」っていうところから、目にも留まらぬ早業でシパパパパパッ! とブロックを組んであっという間にリカバリーする、という荒技まで披露してくれたり(笑)。なんでそんな上手いんですか、って聞いても、本人の中でも完全に自動になってしまっているらしくて、特にコツとかはなさそうな感じでしたね。パズルゲームって中毒性があるのかも。

 スマホで遊べるソーシャルゲームにはもちろん色々あって、中にはストーリー性を重視したものもあるようですが、雑誌などで見た限りですと(私はスマホを持っていないんです:汗)、やはり最近の主流はパズルゲームやカードゲーム、簡単なアクションゲーム等々で、あまりストーリー性のないものが多いみたいですね。

 ストーリー性のない単純作業をずっとやっていて飽きちゃわないのかな、とスマホを持っていない私なんかは思っちゃったりもするんですが(汗)、でも考えてみると昔からあるゲームのほとんど(トランプや花札や将棋等々)にはストーリー性はないわけで、かえってその方が飽きがこないのかもしれません。ストーリーには始まりと終わりがあるわけですが、テトリスのようなゲームにそれはない。腕次第では永遠に続けられるわけです。

 もちろんご自分のスマホで何をして遊ぼうがそれはその人の自由なんであって、他人にとやかく言われる筋合いなどはこれっぽっちもなく、そんなのは大きなお世話以外の何ものでもないわけなんです(汗)。ただ、一応ストーリーの紡ぎ手の端くれとしましては、全員がストーリー性のないゲームで遊んでいる風景というのは、やっぱりちょっとだけ悲しかったですねぇ。もう誰も物語を必要としてくれていないのかな、と。

 前置きが長くなってしまい、申し訳ありません(汗)。

 今年の六月より当サイトの編集長を拝命することになりました、片理誠と申します。と言っても、暫定的な代理の役だと自分では思っていますし、周りは本当に凄い人ばかりなので、私の場合はやっていることも編集長とは名ばかりの下働きなのですが(汗)。とにかく、よろしくお願い致します。

 実はSF Prologue Wave、六月からちょこっとずつ変化しておりまして、まず「SNS連携用のボタン(Twitter、Facebook、mixi)」がつきました! もう面白い作品があったらバンバン呟いたり、イイネ!をしていただければと! それとSNSをされていない方のために「拍手ボタン」もつけました! これはクリックするとカウンターに1が加算されるだけの単純な仕組みなんですけども、こんな簡単なモノでも作者からすれば結構嬉しかったりしますんで、もし「グッジョブ!」と思った作品がありましたら、クリックしてあげてくださいませ。(もちろん掲示板への書き込みや、メールフォームからのお便りも、これまでどおりお待ちしております!)

「アクセスランキング」の表示も始めました。お陰様で以前UPされた作品にも再びアクセスしていただけるようになりました。

 実はこれらはどれも以前から出ていた要望だったんです。ただ何と言っても色々と大所帯でもありまして(汗)、一方では様々な慎重論もあり、なかなか実行に移すことができないでいました。

 でもまぁ丁度編集長も交代になることだし、とにかく物は試しということで、試験的にやってみようということになり、今回の運びに。もちろんこれで終わりではなく、これからもどんどん良くしていければと考えております。

 そして! 何と言っても忘れてはならないのは各コンテンツの充実です。サイトの王道ですよね。器ばっかり豪華でも、中身がなかったら意味がない。こちらにもこれまでと同様、注力してゆく所存です。

 とにかくまずはショートショートです。当サイトのメインコンテンツだと私は位置づけております。物語の妙味を味わって頂くにはやはりショートショートという形態が最上なのではないかと。……が! 実際にやってみてよく分かったんですけど、ショートショートって難しいんですね(汗)。

 まず今って、ショートショートのオーダーが滅多にないんです。こんなに面白いものをなぜ、と不思議でならないんですけどもッ(怒)! もっとバンバン掲載すればいいじゃないですか、ねぇ? とにかく注文がないので、我々の多くが普段書き慣れていないんです(汗)。

 更にショートショートって、短編とは別物なんです。短編を更に短くしたもの、という感じではないんですよ。ショートショートはショートショートなんですね。他に説明のしようがない(汗)。なので短編や長編小説で培ったノウハウが、この分野ではあまり役に立たない……。ちょっと特殊なジャンルなのです。

 そんなこともあってか、最初の内は書き手を探すのも一苦労で(汗)。色々と大変だったりもしたんです。ですが幸い、二年以上サイトの更新を続けてきて、今ではなかなかの、いや、かなり素晴らしい才能が揃っているのではないかと自負しております! 日本SF作家クラブ会員の方にご推薦頂いたゲスト枠の書き手さんも含めて。ショートショートというジャンルでこれだけ充実した作家をそろえているサイトは、ネット広しといえどもそうはないんじゃないでしょうか。

 創作系コンテンツということではEclipse Phase企画も頑張っております! こちらもやはりゲスト枠として才気走った若手から大御所クラスの書き手までもが揃った充実ぶり! 日本SF作家クラブからも多数参加しております! いずれの書き手の作品も面白いこと請け合いですよ。とにかく元になっているEclipse Phaseというゲームが非常に優秀かつユニークなので、そこから生まれる作品も必然的に質の高いものになるんじゃないかと思っています。是非、一読されてみてくださいませ! あ、ちなみに、私も書いてます(笑)。

 この企画は、いつも縁の下で獅子奮迅の働きをしてくださっている大勢の皆様の献身的な協力の上に成り立っています。それがなかったら本当に1ミリも動かなかった企画です(シェアード・ワールドって無茶苦茶難しいのです:汗)。お陰様で我々書き手サイドはかなり楽をさせて頂いてまして(汗)、その分のパワーを心置きなく創作の方に傾注させることができています。

 そしてコラム、ルポ、インタビュー! 当サイトの三大人気コンテンツ! これができるのは日本SF作家クラブから公認を頂いている我がSF Prologue Waveのみッ!

 まずはコラム! って、私も今、こうして書いているわけなんですが(汗)。普段SNS等をされている方ならお分かり頂けるんじゃないかと思うんですが、「さぁ、凄いの書くぞ!」と身構えてしまうと途端に書けなくなりますよね。良い意味で肩から力が抜けた、自然体な文章っていうのは、やはり一朝一夕で身につくようなもんじゃないんですよ。気負った瞬間にどこかに力が入りすぎちゃってるんだと思います。当サイトにも人気の書き手さんが何人もいらっしゃいますが、正味な話、ああいう軽妙洒脱だったり本格的だったりするコラムは普通はなかなか書けないものなのです、たとえ物書きを生業とする身であっても(汗)。

 まぁ、でも何事も場数が大事です。私みたいな者でも続けていくうちに段々と書けるようになっていくんだと思います。日本SF作家クラブにはいい味を持っている人が大勢います(笑)。それをこのまま眠らせておくのはもったいない。その辺りをじゃんじゃん引き出していけたら、かなり面白いことになるんじゃないかと目論んでおります。

 そしてルポインタビューですが、この二つのコンテンツは日本SF評論賞優秀賞出身の方々が中心になって実現されていまして、これらもUPすれば必ずアクセスが集中する人気のコンテンツなんですけども、評論家という人たちはとにかく隙のない本格的な仕事をされる方々で、今のところあまり量産できていないのが苦しいところ(汗)。やっぱりきっちりとした仕事をするためには、下準備等に相応の手間暇がかかるのです。私なぞは「もっとチャランポランなのでも全然OKなんですけど」って言ってるんですけど、やはりそういうのは彼らの美意識が許さないみたいなんです(汗)。

 ですので今のところ数はまだそれほど多くはありませんが、その代わりにどれも素晴らしい、充実した内容になっております。少数精鋭のコンテンツですね。

 宣伝九十九神曼陀羅企画といった告知系のコンテンツにも、どんどんアクセスしていただけると嬉しいです。我々の仕事の成果でもありますので。

 他にもSF Prologue Waveでやりたいことは沢山あって、本当、全然手が足りてません(汗)。

 今年は丁度、日本SF作家クラブ50周年ということで、一年を通じてお祭りのようになっていますが、来年からはまた次のアニバーサリーに向けた通常運転に戻るわけで、我々一人一人にとっても地力を問われる日々が再び始まります。当サイトとしても今後もますます頑張ってゆきたいと思っています。

 ストーリー性のない娯楽が昔からあった一方で、ストーリー性のある娯楽も太古の昔からありましたよね。人類最古の職業は語り部だったのかもしれない、とも言うじゃないですか。娯楽には物語性のあるものとないものとがある。両陣営は大昔から覇を競ってきたのかもしれない。

 一応は作家の端くれであり“物語性あり”の陣営に与する勢力の末席を汚す身としましては、人々が物語と触れ合う風景を電車の中に復活させたいのですよ。それがSFであってくれれば、更に言うことはありません。全てはその日のために!

 ……ところで、実はテトリスとかが凄く下手っぴなんです(汗)。あれ、どうやったら上手くなれるんですか?

片理誠プロフィール


片理誠既刊
『Type:STEELY タイプ・スティーリィ (上)』
『Type:STEELY タイプ・スティーリィ (下)』