文芸誌「季刊メタポゾン」岡和田晃

文芸誌「季刊メタポゾン」にて、日本SF評論賞受賞者有志の評論記事が連載開始!

 岡和田晃

 「季刊メタポゾン」は、『善人は若死にをする』等の著作で知られる作家の大西赤人氏が責任編集をつとめる雑誌です。
 「デジタルメディアとりわけ電子書籍の普及が進む今日、あえて紙のメディアの存在意義を探ろうとする雑誌」として、2011年1月に創刊され、この8号で、発刊2周年を迎えました。
 誌名の〈メタポゾン〉とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、「メタ(新)」と「ポゾン(既)」を合わせた造語とのこと。つまり「古いものと新しいものの協働で、高次元の別の何かを生みだそう」という姿勢を意味します。
 その名に恥じず、毎号、ハードコアな小説や批評が掲載されてきました。
 とりわけ、3・11東日本大震災や各種社会問題を「メタポゾン」は継続的に取り上げており、社会と(広義の)文学との関係性を、改めて読者へ問いかける雑誌になっています。こうしたスタンスの文芸誌は、今や珍しいものになっているのではないでしょうか。

 目玉はやはり、『神聖喜劇』の大西巨人氏へのインタビューや未発表評論等が、毎号掲載されていることでしょう。SFファンにとっては、(「SFマガジン」初代編集長福島正実氏のご子息である)加藤喬氏が、エッセイ「モントレー風便り」を連載していることは要注目です。写真家・森枝卓士氏の連載「喰らうて思う」や、絵本作家の長谷川集平氏の小説『ベガーズ・バンケット』等も、きっと「SF Prologue Wave」をお読みの好奇心あふれる読者の皆さんのお気に召すことと思います。その他、読み手の世界観をいっそう広げてくれる骨太の記事が目白押しです。

 大西赤人氏は伊藤計劃『虐殺器官』を高く評価するなど、SFにも理解があり、2012年10月に発売された「メタポゾン」7号には「『想像力』の脱政治化に抗して――3・11後の『空白の120ヘクタール』『水晶内制度』『妻の帝国』」(岡和田晃)を掲載いただき、そしてこの8号からは「連作評論」と題し、日本SF評論賞受賞者有志の評論を、毎号掲載いただくことになりました。

 そう、この8号には宮野由梨香氏が「人類は、季節繁殖の夢を見るか?」、石和義之氏が「空気と実存」と題し、それぞれ評論記事を寄稿しているのです。評論単体で自立した読み物に仕上がっているのはもとより、前者は萩尾望都氏の『銀の三角』、後者は宮内悠介氏の『盤上の夜』に絡めた批評ともなっており、両作品にご興味のある方は、いっそう愉しめる内容となっています。また岡和田晃は「『棄民』とは、『想定外』の産物なのか?――米田綱路『脱ニッポン記』を読む」という書評記事を掲載いただいております。


『銀の三角』
『盤上の夜』
『脱ニッポン記――反照する精神のトポス(上)』
『脱ニッポン記――反照する精神のトポス(下)』

 ――SFを通して社会と人間のあり方をより深く考えたい方、2013年は「季刊メタポゾン」にご注目ください!

「季刊メタポゾン」公式サイト
http://www.metaposon.com/works.html

岡和田晃プロフィール