「ぶぶぜら息子のお弁当♪」青井美香


(PDFバージョン:zezeburamusuko_aoimika
 今年四月。
 我が家のぶぶぜら息子が中学生になりました。
 ちなみにこの命名はうちの旦那。ぶぶぜらはもちろん、南アフリカで開催されたワールドカップで一躍有名になったブブゼラが由来。学校であったことなんか、なんにもしゃべらないのに、なぜかいつもほかのことにはぶうぶううるさいので、この命名は彼にはぴったりと言えましょう。
 さて、中学生になって、大きな問題がひとつ。小学校まであった学校給食が、彼の通う公立中学では実施されていなかったのです。
 結婚してウン十年たちますが、いまだに「料理? 得意、得意」というフレーズとは縁遠いわたしにとって、これは由々しき事態。いや、幼稚園のときには、たしか作ってはいたんですけど、彼が通っていた幼稚園は、月曜と木曜だけがお弁当、水曜は早帰り、火曜と金曜は給食があったので、毎日作るなんていう難行苦行ではなかったのです。それに、幼稚園と中学生男子とでは、作る量にえらく差があります。
「幼稚園のお弁当のときは楽だったわ。だって、弁当箱の面積が狭かったから、ちょちょっと詰めれば、すぐにいっぱいになったし」
「中学生のそれも男子ともなると、たくさん食べるわよ。そして、とにかくお弁当のおかずは肉、肉、肉。ごはんの上に焼肉でも敷き詰めておけば、大喜びよ」
 というような先輩ママたちのアドバイスをもとに、四月になるまえから、各種お弁当レシピ本検索。とりあえず、その名も『男の子のよろこぶお弁当』(藤野嘉子/文化出版局)、『朝つくらないお弁当の手帖』(植木もも子/日東書院)、『お弁当カタログ』(グラフ社)などをそろえて、お弁当ライフにそなえたのでありました。
 そして四月十日。
 がんばって目覚ましをかけ、朝の六時からお弁当作り。
↓記念すべき初日のお弁当はこちら。

 前日から作っておいた豚肉の生姜焼きと塩もみキュウリとわかめのナムル、漬け卵に白いごはんというシンプルなメニュー。中学入学を機に新調した二段重ねのお弁当箱を初めて使いました。(よく考えたら、朝やったのは、詰めるだけだったかも)
 ちょっと少なめかなと思いつつ、息子が全部食べきってきたので、ほっ。
 というわけで始まったお弁当ライフ。さっそくおかずに行き詰まり、日本が誇る(?)豊富なラインナップの冷食に頼りつつ、なんとかこなしていたのですが……。
 五月になるころから、息子、この程度のお弁当でもすこしずつ残してくるようになりました。どうやら、それまではお弁当を食べる時間を一年生だからということで長めにとっていたのが(時短ならぬ時長?)、通常通りの時間になったようなのです。
 小学校のころから、給食の完食がなかなかできなかった息子。本人曰く「時間内に食べ終わらない」とのこと。
 五月の半ばを過ぎるころには、すっかりお残しが常態化。お弁当の量を減らしていっても、返ってくるお弁当箱が重いんです。すっかりやる気をそがれたわたしはやさぐれて、ますます冷食に頼るありさま。
 なにしろ小さなおにぎりを四個つめると、二個は残して、おかずのハンバーグはひとくちしか食べた痕跡が見られずとかいうありさま。
 あまりに残してくるので、六月十八日にお弁当箱のダウンサイジングを断行。ごはんとおかずの二段重ねはやめました。

 しかしそれでもこの日、おいなりさんを二個、ミニトマトを残して帰ってきた息子。そうでなくても、お弁当を作るテンションが下がっていたのに、さらにダダ下がり。
 このあとも完食することが数えるほどしかなかったのは、暑さのせいで、食欲減退があったのかもしれませんが、作るほうとしては著しく意欲がなくなります。
 そして、夏休み明けの九月。
 またまたお弁当箱の変更を行ないました。
 前回よりもさらに小さめ。そして、あまりのお残しの多さに腹をたてて、九月四日のお弁当はこんなにシンプル!

 しかし、これですら、おにぎりを完食することあたわずの息子。きっと、これも今年の夏の異常な残暑のせいにちがいないと信じて、お弁当作りは続行。
 しかし、このような事態になっても、「え、息子くん、そんなに小さなお弁当でいいの?」とママ友から疑問の声が上がるのは、息子の体格のせいか。子どものころは小柄で痩せてて、蒲柳の質だったと本人が称している旦那の息子とも思えぬほど、身長はわたしを追い抜き、体重もたぶん五〇キロ以上はある、がっちりくんなんです。いったい誰に似たんだか(母親だという話もあるが、そこは無視)。あんなに少量のお弁当でこの体格を維持しているということは、非常にエネルギー効率がいいのかもしれません(いや、朝食と夕食はしっかり食べているというのもあるけど)。
 そうこうするうちに、秋風が吹き、長かった残暑ともようやくお別れ。息子の食欲もすこしは回復するかと思われましたが、ちょっと量を詰めると、お残し復活。時間か、やっぱり時間がないのか!?
 それでも、ここに来て、ようやく「この量なら大丈夫」という鉄板メニューが二つできました。
 ひとつはお稲荷さん。ごはんの量はわずか〇・二五合。一〇〇円ショップで売っているミニお稲荷用味付け油揚げを使用。制作所要時間一五分ぐらい?
 そしてもうひとつは自家製ランチパック。ツナマヨと、クリームチーズ&ハムの二種類を持たせたところ、完食することができました。こちらの制作所要時間は、ひとつにつき一分強。

簡単自家製ランチパック:ツナマヨ制作編

1 八枚切り食パンの二枚を電子レンジ強で三十秒温める。

2 市販のツナマヨソースを片方のパンの中央に塗る。
量はこの程度。厚く塗るとはみ出すので、注意。

3 なにも塗ってないほうのパンを重ねて、「サンドでパンだ」(ランチパックを作るのに進化した型)を上にセットする。

4 上から型をパンにぎゅっとよく押しつける。

5 型をパンからはずす。パンの耳だけカットされた状態になる。

6 自家製ランチパック:ツナマヨの完成!

 というわけで、週に一回はお稲荷さん、もう一回はランチパックで乗り切って、あとは冷食に頼りきるという、ぶぶぜら息子のお弁当ライフなのでありました。

青井美香プロフィール