「BEATLESS」長谷敏司


『BEATLESS』出版詳細
作者 長谷敏司
出版社 角川書店
ISBN 978-4-04-110290-9-C0093
発売日 2012年 10月 10日
定価(税込) 1890円
カバーイラスト redjuice
装丁 草野剛

【内容紹介】

 22世紀の日本。そこはコンピュータの知能が人間を超え、人間と同じかたちをして同じ労働ができる人間型ロボットが社会の一部になって多数運用される、自動化の進みすぎた世界だった。人間と機械が入り乱れて見分けがつかないその世界で、少年は一体の女性型ロボットと出会う。巨大な黒い棺桶型の装置を手にしたそれは、人間を超える知能によって放たれた5体の超高度産物のうちの一体だった。

 コンピュータの進歩によるシンギュラリティ(技術的特異点)到達から数十年を経た世界に、ずっと昔からすでに始まっていた最終局面が訪れる。そして少年は、大きな選択を迫られる。

〝人間のかたちをした架空のキャラクター〟が当たり前になりすぎてしまった今だからこそ、ふたたび語られるべき新しい「かたち」と「意味」の物語。月刊Newtype誌に連載され、redjuiceの挿画で話題を呼んだSF小説がついに書籍化です。

【著者コメント】

『BEATLESS』は、アニメ雑誌であるNewtype誌から連載の打診をいただいて、ふだん小説を読まない十代の読者さんに現代SFを読んでもらおうと考えながら書いた物語でした。人間に似たかたちをしたキャラクターが日常に氾濫している現代は、人間型ロボットが現実社会に現れようとしている時代でもあります。だからこそ、人間とモノの関係のSFは、架空のキャラクターを紹介するアニメ誌の読者さんに届くと思いました。

 SFが多様に「浸透と拡散」を果たして久しい今、SF作家の仕事の一つは、その拡散した先の大きく花開いたジャンルのお客さんに、改めて今のSF小説を提案に行く「凝集と回収」だと考えます。

 回収というと上から目線のようですが、まずそのジャンルが好きなお客さんに楽しんでいただきたいわけで。ジャンルに真摯に向き合いながらSFとしてのエッセンスを凝集して、SFとそのジャンルの読者さんが幸せになれる小説を書ければ、win-winの関係で双方それだけ豊かになるのではないかと。

 作品の力を信じるのは同じにしても、さまざまな工夫を試してみたいということで。いろんな場所に出向いて読者さんにアピールしてきて、世界を広げてゆくことは、ジャンルが細分化した今らしいSFのかたちに思えます。

 SF Prologue Waveを見ていただいているSFファンの皆様に、楽しんでいただければ幸いです。もちろん、前口上はともあれSF小説として書きましたので!

長谷敏司プロフィール


長谷敏司既刊
『BEATLESS』