
ここに収録するインタビューは、ロシアの大手新聞「モスコフスキー・コムソモーレツ」(MK)に掲載された筆者(大野典宏)が受けたものである。モスコフスキー・コムソモーレツはロシアで総合的なニュースを扱っている新聞社であり、吸収合併により大きくなった全国規模のWeb新聞である。似たような名前の「コムソモーリツカヤ・プラウダ」はイエローペーパーで、日本では混乱されがちで少し困るのだが、ふざけた媒体ではない。
インタビューは2022年1月15日に起こったトンガの地震で日本全国の海岸に津波警報が発令され、さらに1月22日に日向灘を震源とする最大震度5の地震が起こった直後に行われた。
ただ、このインタビューが公開されたすぐ後、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した際、全ての新聞社のWebが公開停止され、再び閲覧できるようになるまで2年かかった。
今回、その内容を翻訳して掲載する。なお、このインタビューの後に起こったロシアによるウクライナ侵攻、日本で起こった能登半島の震災に関しては予想もつかなかったので、割り引いていただきたい。
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「日本の作家が、自然災害のもたらす哲学と文化への影響について語った」
(2022年)1月22日、日の昇る国はたいへん大きく揺れ、科学者は地震の影響について警告している。文学に向き合う方法は一つではないが、明らかに静かな牧草地と揺るがない平和な大地に慣れているレフ・トルストイには不可能なことだっただろう。一方、インタビューイであるMk特派員の大野典宏は、地震災害が起こる国でエッセイを書き、ロシアをはじめとした国のフィクションを翻訳している。
MK:あなたは人口密度の高い愛知県に住んでいます。私たちは最近の災害のニュースに非常に不安を感じていました。22日にあなたはどうなりましたか?
大野:震源地が遠く離れていたので、この地震で特に影響はありませんでした。特に損害を被ったわけではありません。私にとっては(心配ではあるものの)普段通りでした。日本では毎日、どこかで地震が発生します。数年に一回くらいの割合で大きな地震があるので、みんな備えていますし、建物の耐震度は高くなっています。
MK:そして1月17日はどうでしたか? 津波の被害はありましたか?
大野:突然、夜中にテレビのニュースで津波警報を放送し始めたので驚きました。火山の噴火が発生した場所は非常に遠いのですが、津波のエネルギーが非常に大きいため、太平洋岸に簡単に到達します。全ての警告が解除されるまでに2日かかりました。
MK:足下の地盤の「脆弱性」は、日本の哲学、世界の絵、詩、文学にどのように影響していますか? 全体的な傾向はありますか?
大野:日本の文化と自然災害の間には非常に密接な関係があります。古代以来、私たちはよく知られている地震や台風に関連する被害を何度も経験してきました。さらに、日本には多くの内戦がありました。したがって、古代から、私たちのスピード感は少し違っています。繁栄している人でさえ、いつかは死ぬでしょう、時代は常に変化しています。私たちはそのような時にどのように生きるのでしょうか? これは最も重要な質問であり、精神的な世界に大きな影響を与えています。一言で言うならば、「諸行無常」です。
MK:私はウクライナ出身で、世代全体に影響を与えたチェルノブイリ原子力発電所での事故を覚えています。福島はあなたの現実に影響していますか?
大野:福島原子力発電所での事故にはたいへん驚きました。観測史上で最強の地震は多くの建物を破壊し、次々と津波が続き、人々と財産が洗い流されました。
これは、日本が放射線に苦しんだ4回目の出来事でした。広島、長崎、第五福竜丸(アメリカの核実験の影響で被曝した漁船)、そして福島です。日本人と核被害は不可分のものになりました。
そして、私たちは多くを学びました。現在が平穏であったとしても、しばらく後には死が私たちを待っています。それだけではありません。私たちはもはや自然災害に備えることにも気を遣っています。
MK:ロシアとのあなたのつながりと私たちの文化について教えてください。
大野:私は電子技術と文学に関するエッセイを書いています。また、ロシアの小説を翻訳しています。私にはロシアの作家に多くの友人がいます。
MK:日本では、作家は個人で働いていますか、それとも組合で団結して活動していますか?
大野:私は、日本推理作家協会の会員です。
MK:私たちはしばしばステレオタイプの偏見で日本を見ています。小さな家、低い天井、アニメを描き、俳句を詠みます。
大野:非常に奇妙な偏見ですね。全員が小さな家に住んでいるわけではありませんが、都会を除けばアパートやウサギ小屋はほとんどありません。若いイラストレーターが漫画的な絵を描くのは事実ですが、商業的なイラストでは事情が完全に異なります。もちろん、俳句は最も有名な日本の詩です。ただし、これは唯一の形式ではなく、短歌や連歌など、他にも多くの形式があります。また、自由詩を書く詩人もいます。そして、最も人気のある散文のジャンルは小説です。
今は文学の大きな過渡期です。ジャンル間の境界は曖昧になり始めています。たとえば「サイエンスフィクション」や「ミステリ」は非常に盛んです。ただ、海外の影響がなければ、日本文学は今日のものではありません。これは誇張ではありません。ロシア文学は私たちの現代文学に大きな影響を与えました。そして現時点では、イスラム諸国(アフガニスタンを含む)の作品でさえ日本に翻訳されています。そして、私の個人的な趣味は今や韓国文学です。
インタビュー:イワン・ヴォロシュク
翻訳:大野典宏
