【小松左京氏追悼エッセイ】「夢のよう」伊藤致雄

(PDFバージョン:yumenoyou_itoumuneo
 受賞の時、編集者から電話がありまして、「明日の夕方、小松先生と対談をして欲しい」(小松左京マガジン第20巻にその対談が載るのです)。
 翌日、編集者と一緒に小松さんの事務所に伺いましたら、丁寧な挨拶をいただき、大変に恐縮しました。もちろん初対面です。小松さんは年を召しており、見た目はお爺さんでしたが、お話はそれはまた大変に愉快で、わたしが知らないことを何十倍も知っておりました。大作家ですから、当然ですね。
 当時、わたしの歳は63、小松先生は74歳でした。
 酒席も談話もとても愉快。酒をたくさん飲みましたが、小松さんは秘書さんには禁酒と叱られましたが、蔭で、わたしのグラスの焼酎を「それ、こちらのグラスに足してくれるかね」。
「はい、ナイショで。ええと、日本沈没はどのくらい年月が掛かったのですか?」
「9年です」
 あとのハナシはみんな忘れてしまいましたが、9年のことははっきりと覚えております。
 そうそう、「筒井君は1週間で書き上げたそうだよ、まったく・・・」。
「ああ、日本以外全部沈没ですね」
 そんなこんなと、6時から11時頃までの愉悦の時でした。

伊藤致雄プロフィール