【竹内博氏追悼エッセイ】「竹内博さんの意外な一面」難波弘之

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 突然の竹内博さんの訃報は、かなりショックでした。

 もう十年ほど前のことですが、「実は僕、隠れ香山滋ファンで、全集も持ってます」と、あるパーティの席上で告白したら、あのシャイな感じのままでしたが、嬉しそうに相好を崩されて、「一度うちに遊びにいらっしゃい」と言って下さいましたので、これを真に受けて図々しくも本当に押し掛けました。
 その時は東北沢の駅まで出迎えて下さり、井の頭通り沿いのアパートへ案内されました。

 他の本はご実家に置いてあるそうで、ほとんど香山滋の本しかありませんでしたが、ジュブナイルに至るまで、本当に状態の良いコレクションが整然と並べられ、しばし色々手に取って拝見させて頂きました。

 「難波さんはどの作品が一番お好きですか?」と訊かれ、迷わず「『地球喪失』です」と答えると、「ああ、あれはこうですねああですね」と、実に的確なお話が返って来ました。

 しばらくすると「実は、僕、こんなコレクションもあるんです」とおっしゃって見せて下さったのが、何と岩崎宏美さんに関するコレクションでした。
 シングルや LP はもちろん、ポスターやアイドル誌の切り抜きまで、香山滋と同等の情熱と丁寧さで綺麗に保存されていました。
 きっと、僕が岩崎姉妹のレコーディングに参加していることもご存知のうえで、見せて下さったのでしょう。

 折しも宏美さんのデビュー三十周年だったかで、果たしてご本人はこんなに資料をお持ちかしら? と気になり、ご本人に電話したら、「実はちょうど散逸してしまった自分の資料を探している」とのこと。
 何でも、宏美さんの熱心なファンとして、竹内さんのことは前からご存知だったようですが、そこは歌手とファンですから、距離を取っていたようです。
 「実はこれこれこういう人です。おたくだけど(笑)”使えるおたく”です。絶対に怪しい人物ではありませんから、安心して彼から資料を借りて下さい」と提案し、お二人の間を取り持つことになりました。
 何とこれがきっかけで、竹内さんの資料は彼女のボックス・セット(だったか?)に使われることになったのです。

 その後も何度かパーティなどでお見かけしご挨拶をしました。
 地味に研究活動を続けられているようでしたが、まさかお具合が悪いとは存じませんでした。
 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

難波弘之プロフィール


竹内博既刊
『特撮をめぐる人々 日本映画昭和の時代』
『定本円谷英二随筆評論集成』