【創刊によせて】
●第15代日本SF作家クラブ会長 新井素子
SFPW、創刊おめでとうございます。
これは、日本SF作家クラブ内の、若手の方々が始めたムーブメントです。
今、日本SFのおかれた状況は大変厳しく、SF専門誌は廃刊を余儀なくされるものがあり、また、SFの新人賞も、少なくなってきています。原稿ができていても、本の出版ができないケースもでてきています。
ここで、立ち上がったのが、SFPWです。
専門誌が廃刊するのなら、自分達で、原稿料がなくったって、原稿を書いて、それを読者に届けようじゃないか。本がでないのなら、本じゃない処で、自分達の原稿を読んでもらおうじゃないかっ。
素晴らしい動きだと思います。企業としての出版社主導ではなく、SF界内部からこんな動きがでてくる限り、SFというのは、まだまだ若く、未来がある分野だと思え、とても嬉しいです。
いろいろ失敗もあるかも知れません。不手際もあるかも知れません。(若いってそういうことだもんね。)
ですが、この可能性を、私は心から応援します。
がんばれSFPW!
みなさま、どうぞ、読んでね。
そして、楽しんでください。
●第19代日本SF作家クラブ事務局長 井上雅彦
世の中には、小説家やその他のクリエイター、研究家や評論家、編集者、出版関係者などによる職能団体、親睦団体がいくつか存在するけれど、〈日本SF作家クラブ〉のような団体は、他に類を見ない。これが公然の秘密なのか魔術的奥義なのかはわからないが、〈日本SF作家クラブ〉の会員同士が、仕事の傍ら、ちょいとくつろいだ気分で会話を交わせば、たちまち思考が未知の次元まで飛翔する。二つの意見がぶつかれば、七つの視野が広がる。なにげない言葉の端っこにもSF的想像力が詰まっているので、軽い会話にいつしか加速度がつくと、それは豊かな奔流が――かつて優雅にも「オモロ大放談」と称された種類のセッションが――時を超えて出現していることにも気づかされ、陶然となる。
そんな濃厚な雰囲気が、どこまで配信されるかどうかは、わからない。
このネットマガジンSFPWは、〈日本SF作家クラブ〉の若手の有志たちが企画した。
正確に言えば、昨年休止した「日本SF新人賞」の受賞者たちがその中心になっている。
かつて僕自身も体験しているのでいえることだが、自分たちを作家としてプロデビューさせた賞そのものがなくなるという衝撃と喪失感は、とてつもなく大きい。
だが、これを受けとめ、乗り越えていこうという時の本人たちには、歴史的な偉業をやすやすと為し遂げてしまうだけの勇気とエネルギーが充満しているのだ。
なによりも、まず、ここから始まる。
SFPWが、世界をどう面白くしていくか。
僕らは、わくわくしながら、参加させてもらおうと思っている。