
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
シンプルに、スピーディに、そして生き残れ!――それが『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』だ。
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
ゲームマーケット2026春に参加された方からは、『モンスター!モンスター!TRPG』の新作『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』の入手報告があがっていますが、買いそびれた人でも、通販でゲットできますのでご安心ください。
さて、今回は「『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』は問いかける――人間とは何か、と。」(「FT新聞」No.4859)の続きです。言葉というものは不思議なもので、無限定な思考に一定の意味と秩序、方向性を与えるものとなっています。たかがゲームターム、されどゲームタームというわけで、そこから『モンスター!モンスター!TRPG』らしさ、というものが立ち上がってくるというお話をしてみました。
今回は「技能(スキル)」と「特殊能力(アビリティ)」の話です。「職業(プロフェッション)」というのは、奇しくもゲームマーケット2026でクイックスタートルール&アドベンチャーが発売されていた『ダンジョン・クロール・クラッシックスTRPG』(Kaizoku Press)で0レベルキャラクターの職業を設定するのと同様、冒険者という広範なカテゴリーとは別個の専門性を指しています。
D&D第5版なんかなら、ここで行動の動機までもランダムで決定してしまうのでしょうが、そこはオールドスクールの雄ということで、キャラクターの内面は、あくまでもプレイヤーに委ねられています。
『ダンジョン・クロール・クラッシックスTRPG』の場合、職業によって習熟している武器や取引アイテムは変わってきますが、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』の場合は、あくまでも社会におけるPCの立ち位置というに留まります。
具体的に数値的な影響を与えるのは、「技能」と「特殊能力」の2つになります。人間の場合、[応急処置]や[方角案内]といった技能を3つまで獲得することができ、レベル1からスタートします。ムーン・エルフの場合は、長命であることを活かして1d6のレベルからスタート。
どの技能を取得できるかは、2d6のランダムで決まり、重複した場合は、重複ごとに1レベルずつ技能値がアップします。それで、技能値ぶんだけ関連するセービング・ロールへのボーナスになる、というシンプルなものです。[応急処置]が2レベルなら、手当の際のセービング・ロールに+2される、ということです。
このルールは『トンネルズ&トロールズ完全版』などのタレント(キャラクター作成時に選択し、関連するセービング・ロールに+3のボーナスを与える)をいっそうシンプルかつスピーディにアレンジしたもののようにも思われます。
また、『ハイパー・トンネルズ&トロールズ』にも技能のルールがありますが。こちらは各職業ごとに取得や成長の難易度が決まっており――1レベルの戦士であれば「乗馬」か「調教」という具合です――修得したぶんだけ、セービング・ロールのレベルを下げることができるというものです。例えば「魔法抵抗」の技能は、戦士の場合成長難易度が3。つまり3レベルになって初めて1レベルぶんの「魔法抵抗」を取得でき、敵の呪文に対する抵抗の際を、セービング・ロールのレベルを「魔法抵抗」のレベルぶん下げられる、というわけです(要するに、目標値が5刻みで下がるということ)。
私はハイパーT&Tを、国産RPG有数の意欲的なルールシステムだと思っており、この技能ルールも画期的だと思っていますが、反面、どの技能を取得するのか職業ごとに細分化し、さらにはキャラクター・レベルに応じた難易度が設定されていることが、このゲームのスピードを損ねているとも思ってきました。
実際、技能ルールを省略し、他のハイパー・ポイント(セッションごとに与えられるキャラクター・レベルに等しいボーナスで、1点消費するごとに、セービング・ロールで振るサイコロの個数を1個増やせる)のようなルールを、自分のセッションでは導入したこともザラです。
極端な話、GMは『モンスター!モンスター!TRPG』のカオス・ファクターのルールの代わりに、ハイパー・ポイントを導入した運用をしてもよいわけです。展開がいっそう派手になるわけですが、その方が『モンスター!モンスター!TRPG』らしい、と思うプレイヤーも少なくないでしょう。
特殊能力はどうでしょうか? 特殊能力は2d6で決まり、それを用いれば、各々の特殊能力に設定されている関連能力値の10分の1ぶん、セービング・ロールへのボーナスが得られます。思うに、これは『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』や『モンスター!モンスター!TRPG』の第2.7版で設定されている奇策(スタント)との連携をスムーズにさせるため、あえてシンプルにしているという面があるのではないかと思います。
ルールブックを熟読して設定との整合性を確認したうえで、特殊能力の発動を判定するTRPGも多いなか、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』の場合、スピードと応用力が命。それで効果については、特殊能力と能力値レベルを紐づけることで、一定の上限を認めて無敵にはしない。
例えばムーン・エルフの特殊能力に「幻惑の熟達」というものがあります。こちらは知性度に紐づいた特殊能力なのですが、幻影や魔術的な光景を生み出すことができます。具体的な呪文ではなく特殊能力なので、知性度を用いた策略を仕掛ける際に、「幻惑の熟達」の特殊能力による効果を上乗せし、「奇策」の成功率を上げる、という使い方をするのがよいでしょう。
例えばムーン・エルフのアーモ(知性度25)が、正面から立ち向かっても勝てそうにない巨大なターキー・モンスター(MR300)を森の一角に設けた落とし穴へ追い込もうとしたとします。このとき「幻惑の熟達」で自分の分身がいると見せかけ、ギリギリまで相手をおびき寄せて作戦の成功率を上げる「奇策」を打つ、といった具合です。セービング・ロールのボーナスはあくまでも+2なので、そう大きな効果が期待できるわけではありませんが、アーモの職業が「野伏」で、かつ技能に[自然知識]があったら、相乗効果が期待できるのではないでしょうか?
プレイヤー側が、自分の有利になるように粘ってアイデアを出していくと、ルールからかけ離れてしまうと煙たがられるタイプのTRPGもままありますが、『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』は逆。人型生物はか弱い存在なのですから、とにかく奇策で生き延びるほかないのです!
『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』を導入し、あなたのPCの生存率を上げるコツを身に着けてはいかがでしょうか?
■書誌情報
TRPGルールブック&『モンスター!モンスター!TRPG』用サプリメント
『ヒューマンズ!ヒューマンズ!』日本語版
著 ケン・セント・アンドレ
訳 岡和田晃
絵 スティーブ・クロンプトン
印刷版 2,200円
通販は以下
https://ftbooks.booth.pm/items/8232648
初出:「FT新聞」No.4873(2026年5月27日)
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
