
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『アナログゲーム産業年鑑2025』のご紹介
岡和田晃
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
「FT新聞」No.4831(2026年4月16日)では、『アナログゲーム産業年鑑2024』につき、その成り立ちを含めて詳しく説明いたしました。
今回ご紹介する『アナログゲーム産業年鑑2025』は、2026年3月に出たばかりの続編であり、前年版と同じく、一般社団法人アナログゲームミュージアム運営委員会が矢野経済研究所の協力を得て刊行するもの。2024年1月から12月までのアナログゲーム業界の動向が詳述されています。
ページ数は2倍以上になっており、各ジャンル別(テーブルゲーム、伝統ゲーム、シミュレーションゲーム、TCG、TRPG、体験型ゲーム、その他のゲーム)の分析や、アナログゲームの教育利用に関する研究動向、ボードゲームサークル小史なども付記され、内容が飛躍的に充実を見せたと言っても過言ではありません。そのぶん、価格は個人での購入は困難なレベルになってしまっているので、お近くの図書館や大学・研究機関などへ働きかけていただければと思います。
2024年の動向を扱うので、この巻を単独で参照しても、特に問題はありません。
特筆すべきは、シミュレーションゲームの項目では、ウォーゲームなどのボード・シミュレーションゲーム(担当:瀬戸利春)、『ウォーハンマー』などのミニチュア・シミュレーションゲーム(担当:小泉慎吾)が対象となり、TCGの項目では国内動向のほか、海外動向(担当:yoko5000)についても詳述されていること。ここでしか読めない分析も含まれています。
TRPGの項目は、私(岡和田)が担当し、40ページほどの内容になっています。TRPGに関しては、他のアナログゲームと比べて言語依存性がきわめて高く、それゆえ、むしろ他の文芸メディアや出版ジャーナリズムと密接な関わりをもってきました。
かてて加えて、同じTRPGというジャンル名を冠したものでも、多様化が進んでいるため、このため、市場の数字だけを追うのでは、どうにも内実を捉えづらいところがあります。それこそ、TRPGについて知らない人からすると、業界シェアNo.1を保持している「『クトゥルフ神話TRPG』とそれ以外」に区分されてしまいがちです。年鑑である以上は、そうした弊は避けたい。
そのような問題意識から、『アナログゲーム産業年鑑2025』のTRPGの項目においては、まずTRPGとは何かの説明、簡単な成立史と現況を整理したうえで、数字の羅列に終わらない批評性を持たせるべく腐心しました。それこそ、『文藝年鑑』のような先行の事例を見ても、批評性がないサーヴェイは読むに堪えないからです。
それでは具体的に、当該項目の目次をご紹介しましょう。なお、TRPGのみならず、ゲームブックやソロジャーナリング、LARPや学術動向などについても、簡単ではありますが、言及している点も重要でしょうか。
本章では全体を6節で構成し、その後に、2つのリストを載せて補完を試みています。また、とりわけTRPGは多数のクリエイターが関わることが多い分野ですので、煩瑣になりがちな作家一覧は、本書の方針にあわせて注釈に落とし込む形で、読みやすくなるよう配慮しました。
【概要】
第5章 TRPG
本章の対象となるゲームの領域
・TRPG
・ゲームブック / ソロアドベンチャー / ソロジャーナリング
・LARP
・上記に関する学術研究
【目次】
序文
第1節 海外と連動した作品について
1-1:『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とシェアードワールド小説
1-2:『トンネルズ&トロールズ』と『モンスター!モンスター!TRPG』
1-3:『ファイティング・ファンタジー』関連作とゲームブック
1-4:『クトゥルフ神話TRPG』が拓いた新規層
第2節 出版メディア
2-1:「Role&Roll」とアークライト/新紀元社刊行作品の動向
2-2:「GMウォーロック」とグループSNE作品の動向
2-3:「ゲーマーズ・フィールド」とF.E.A.R.作品の動向
第3節 電子メディア
3-1:自前のECサイトや、各種電子書籍販売サイトの活用
3-2:分厚いハードカバー書籍群とPDF でのサポートを連動させたホビージャパン
3-3:海外RPG を小回りが効く形で刊行しているベンダーたち
第4節 プレイスペースや新機軸の試み等
4-1:ボードゲームカフェ
4-2:オンラインセッション
4-3:LARP、学術誌
4-4:TRPG落語、一般誌での展開
第5節 TRPGの市場規模
第6節 ゲーム賞およびプロ・デビュー
2024年のRPG刊行リスト(作:石在神明、岡和田晃)
FT新聞 2024年のアナログゲーム関係記事一覧(作:水波流、岡和田晃)
編集は鬼頭基さんが担当してくださいました。
できるだけ公正で広い視座での概括を試みましたが、もちろん、これで網羅されたと言うつもりはありません。
私は編集委員会のメンバーではなく、一人の寄稿者にすぎないものの、この仕事を公共性の高いものだと考えています。今後は、「産業」としてだけではなく、「文化」としてこの分野を扱えるようにするのが目標です。ぜひ、ご一読のうえ、ご意見をお聞かせ願えれば幸いです。
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
『アナログゲーム産業年鑑2025』
<冊子版・電子版共通>
発行日:2026年3月10日
版型:A4
ページ数:258
ISSN: 2759-8209
本文モノクロ印刷
※電子版は冊子版の誤植修正、カラー図版の掲載を行っています。
編著:一般社団法人アナログゲームミュージアム運営委員会
発行人:草場 純
発売元:一般社団法人アナログゲームミュージアム運営委員会
連絡先:info@analoggamemuseum.org
※公式ページ:https://analoggamemuseum.org/publication/annualreport
価格:本体80,000円+税
冊子版:https://booth.pm/ko/items/8070461
電子版:https://analoggamemuseum.booth.pm/items/8070469
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
初出:「FT新聞」No.4845(2026年4月29日)
